港だけを見ない都市貨物対策――マンハッタンの大型建物と事業所を探す
Large urban freight traffic generators: Opportunities for city logistics initiatives
マンハッタンの分析は、多数の事業所が入る建物や大規模事業所も、貨物配送が集中する対策候補になり得ることを示した。
この論文のポイント
- 単独郵便番号を持つマンハッタンの56施設について、FTA 7,030件/日、FTP 6,761トリップ/日と推計した。
- 従業員250人以上の事業所群について、FTA 43,224件/日、FTP 40,274トリップ/日と推計した。
- 商業用途面積から選んだ146税区画のFTA推計は67,949件/日で、マンハッタン全体のFTA推計の約37.25%に当たる。
背景と課題
都市の貨物交通を考えるとき、港湾やコンテナ施設は目立つ。しかし、個々の配送量が小さい店舗や事務所も、同じ建物に多数集まれば建物全体への配送は大きくなる。論文は、多くの貨物車トリップを生み、または引き付ける施設を「大型都市貨物交通発生源(LTG)」と呼び、著名な大型建物と、目立たなくても規模の大きい事業所に着目する。目的は対策の効果を測ることではなく、都市物流の施策を検討する施設を見つけ、その貨物交通の規模を推計することにある。
研究の方法
推計の基本単位は事業所で、建物、郵便番号、税区画は候補の抽出や集計に使う単位である。求める量は、事業所が受け取る配送に対応する貨物トリップ集中量(FTA、配送件数/日)と、事業所から送る貨物に伴う貨物トリップ発生量(FTP、貨物車トリップ/日)。両者は定義も単位も異なり、そのまま足して道路上の通過台数とはできない。著者らはニューヨーク地域の荷受け事業者約400社、運送事業者約400社の調査から作成した貨物トリップ生成モデルを用いる。業種は北米産業分類(NAICS)、土地利用は市の用途地域で区分し、事業所の従業員数との関係を事業所単位の通常の最小二乗法で推定した。これは、観測値と式による推計値の差の二乗和が小さくなる係数を求める方法である。本文には調査票、欠測処理や、ここで用いた個々の係数の詳しい推定過程は示されていない。
計算では対象に合う区分の係数を選び、定数項に「従業員1人当たりの係数×従業員数」を加えて、1日当たりのFTAまたはFTPを推計する。表には定数項だけ、従業員数に比例する項だけの区分もあり、利用できるモデルがない量は推計しない。例えば業種別モデルの卸売業では、FTAは「2.272+0.069×従業員数」。0.069は従業員数が1人違う場合の推計FTAの差を表し、増員による因果的な増加量ではない。
候補は二つの入口から探す。第一に、単独の郵便番号を持つ高取扱量の建物を選び、郵便番号別事業所統計の業種・雇用情報と業種別モデルを用いて建物内の推計量を集計する。第二に、同統計から従業員250~499人、500~999人、1000人以上の事業所群を選ぶ。さらに別の規模指標として、マンハッタンの税区画データPLUTOで商業用途面積を順位付けし、大面積区画を選んで用途地域別モデルからFTAを推計する。このモデルには土地利用別のFTP推計式がない。面積を従業員数などのモデル入力へどう対応付けたか、また規模階級内の従業員数をどう割り当てたかは、本文だけでは再現できない。出力は候補群ごとの推計量と位置の手掛かりであり、車両の走行経路や施策後の削減量ではない。
この研究の新しさ
施設を探す際に、「単独で大きい事業所」と「小さな事業所が集まって全体では大きい建物」を区別した点が特徴である。論文はこれを補完的な二つの選定手続きと位置付け、大規模事業所については従業員数と商業用途面積の両方から候補を探す。選定と貨物トリップ推計を結び付け、共同荷受けや荷さばき管理を検討する場所の絞り込みに使う構成である。
従来研究との違い
三つの選定基準は、同じ施設群に対する独立した比較実験ではない。単独郵便番号なら建物を特定しやすいが、その条件を満たさない建物は拾えない。従業員規模には公的統計を使える一方、この分析で利用できる位置情報は郵便番号単位であり、個々の事業所を正確に地図へ置けない。商業用途面積なら税区画を地図上に示せるが、区画は単一の事業所と同義ではない。従業員数と面積で選ぶ対象には重複が見込まれるため、各群の推計量を足して地域全体への寄与とはできない。
結果と評価
表6では、単独郵便番号で選んだマンハッタンの56施設について、FTAを7,030件/日、FTPを6,761トリップ/日と推計する。同表のマンハッタン全体の推計値、FTA 182,427件/日、FTP 161,144トリップ/日を分母にすると、それぞれ約3.85%、4.20%である。従業員250人以上の事業所群はFTA 43,224件/日、FTP 40,274トリップ/日。面積から選んだ146税区画はFTA 67,949件/日で、マンハッタン全体のFTAの約37.25%に当たる。面積別にはFTPの推計値はない。
いずれも選定対象にモデルを適用した推計で、施設での実測交通量でも施策の効果測定でもない。論文は既存モデルの外部データによる検証と他地域への移転可能性の分析に言及するが、この本文には検証指標や詳しい手順を載せず、関連研究を参照先としている。示された割合を他都市にも当てはまる値とは扱えない。
限界・注意点
著者らは、LTGが通常の事業所とは異なる特性を持つ可能性を指摘し、既存モデルによる貨物トリップ推計は下限の目安にとどまるかもしれないと述べる。モデルの業種・土地利用区分は粗く、郵便番号別雇用統計には、本部が全社の情報をまとめて報告することによる問題もある。加えて、面積別の分析ではFTPを推計できない。共同荷受けや時間外配送は導入機会として論じられているが、本分析はその効果を直接検証していない。個別施設で実行できるかは、荷物を置く空間や警備、荷さばき設備などを別途調べて判断すべきである。
現場への応用案
【編集上の提案】候補を「建物全体への集中」と「個別事業所の規模」に分けて地図に示し、共同荷受け、時間外配送、荷さばきスペースの調整を検討する地点を整理するとよい。地図には郵便番号単位と税区画単位の違いを明記し、濃淡を道路混雑や対策効果の実測値と誤読させないようにする。
現場で確かめるには
【編集上の検証案】導入前に、候補施設の搬入・搬出台数、到着時刻、荷さばき場の占有、テナント別の受取方法を現地で確認する。共同荷受けや時間外配送を試す場合は、参加施設と比較施設で、導入前後のピーク時到着台数や路上停車を同じ方法で記録したい。保管場所、警備、費用、貨物の責任分担について、管理会社、テナント、運送事業者の合意可能性も確かめる必要がある。
解説は原文の要旨・本文の確認範囲に基づきます。AIで作成し、同じモデルで原文との照合を行っています。全記事の人手による校閲は完了していません。「現場への応用案」「現場で確かめるには」は編集上の検討案です。
