メルボルンの集合住宅増加に公共交通の供給は追いついたか
An empirical analysis of transport and land-use integration: The case of public transport and apartment housing in Melbourne, Australia
メルボルンの集合住宅周辺では19年間に列車・路面電車の便数はほぼ横ばいだったが、車両の大型化を含む供給力は都市圏全体で人口増をわずかに上回った。
この論文のポイント
- 集合住宅から徒歩800メートル圏では、19年間に集合住宅戸数が88%、人口が32%増えたのに対し、列車・路面電車の年間便数は5%増だった。
- 車両定員の変化を反映した便数は都市圏全体で35%増えたが、自治体・路線ごとの1人当たり供給には大きな差があった。
- 集合住宅は当初から公共交通サービスが多い地域に集まる傾向が見られた一方、住宅増加に対応した増便の証拠は乏しかった。
背景と課題
集合住宅を公共交通の便利な場所に建てることは、交通と土地利用を結び付ける政策の一つである。しかし、住宅が増えた場所で運行サービスも増えたのかを、長期にわたり確かめた研究は少ない。本研究はメルボルンを対象に、2003–04年度から2021–22年度までの集合住宅建設、周辺人口、公共交通の予定便数を照合した。都市圏全体の推移に加え、自治体や路線の間で住民1人当たりの供給がどう違うかも調べている。
研究の方法
入力は、所在地と戸数を持つ住宅開発の記録、および年度別の列車・路面電車・バスの予定運行データである。住宅は10戸以上の開発を対象とし、「4階建て以上の連棟住宅」または「集合住宅」と分類されたものに加え、敷地1ヘクタール当たり100戸以上の開発も集合住宅として抽出した。2017年以降の住宅データは暦年単位のため、完成戸数をその暦年にまたがる二つの会計年度へ半分ずつ配分する。交通データは路線変更を駅・停留所の記録に対応させ、列車では路線別便数を駅別便数に変換する。バスの長期データは得られないため、19年間の主な比較は列車と路面電車に限る。
次に、選んだ地域の集合住宅から、道路網に沿って徒歩800メートル以内にある駅・停留所を特定し、各年度にそこを通る予定便数を集める。同じ路面電車やバスが範囲内の複数停留所に止まっても、路線ごとに重複して数えない。列車は同一路線の駅別便数の最大値を採り、路線間で合計する。2路線が合流する場合は、分岐側の各最大値の和と、合流後の区間の最大値を比べ、大きい方を採る。さらに車両定員の変化を便数に反映して「定員調整後便数」を作る。論文の列車の例では、定員が798人から900人になった場合、900÷798=約1.13を便数に掛ける。同じ運行本数でも、定員が増えればこの値は大きくなる。
出力は、地域・路線ごとの集合住宅戸数、予定便数、定員調整後便数の年度別推移である。公平性の分析では、集合住宅から徒歩800メートル以内の駅・停留所を起点に、その周囲800メートルの人口を集計し、便数を人口で割って1人当たり供給を比較する。さらに、所得・教育・職業などを組み合わせた地域の社会経済的な有利・不利の指数「IRSAD」を人口で加重平均し、2021–22年度の供給との関係を見る。これは推移と地域間の関連を調べる分析であり、住宅建設が増便を引き起こしたかを推定するものではない。
この研究の新しさ
本研究の特徴は、集合住宅周辺に着目して19年間の住宅建設と公共交通の供給を追い、便数だけでなく車両定員の変化も反映した点にある。また、都市圏全体と自治体・路線別の結果を併記した。著者らは、必要度を問わず1人当たり供給の差を見る「水平的公平性」と、社会経済的な有利・不利に応じた供給を見る「垂直的公平性」の両方から、集合住宅周辺を検討している。
従来研究との違い
先行研究には人口密度と公共交通の利用、あるいは社会的な必要度と供給不足を扱うものがある。本論文は利用者数ではなく、集合住宅周辺で提供される予定便数を中心に測る。定員調整前後を比べることで、増便による変化と車両大型化による供給力の変化を区別した。バスを含む結果も2015–16年度以降について別途示しているが、2003–04年度からの主な比較は列車と路面電車である。
結果と評価
集合住宅から徒歩800メートル圏で比較すると、2003–04年度から2021–22年度に集合住宅戸数は88%、対象地域の人口は32%増えた。一方、列車・路面電車の年間便数は5%増、定員調整後便数は35%増だった。都市圏全体では、車両大型化を含む供給力の伸びが人口増をわずかに上回る。ただし、自治体別・路線別の変化は一様ではない。著者らは、集合住宅が当初から交通サービスの多い地域に集まる傾向を示す一方、住宅増加に対応して便数が増えた証拠は乏しいと解釈する。
定員調整後の1人当たり便数も自治体・路線間で大きく異なった。論文では、都心部の多くの自治体が年間約5~15便/人、中間部・外縁部の多くが約1~4便/人と報告する。ただし、この長期比較にバスは入らず、バスを含めた2015–16年度以降の結果では外縁部と都心部の水準は近づく。2021–22年度に3交通機関を含めて調べると、IRSADと1人当たり供給に明確な関係は見られなかった。これは社会経済状況が供給配分に影響しないという因果的な証明ではない。
限界・注意点
著者らは、乗客数、混雑、政治的判断、投資判断などの長期データが不足し、住宅開発がサービス供給をどの程度変えたかは評価できなかったと述べる。バスの便数データは2015–16年度以降に限られ、対象もメルボルン都市圏内である。供給指標は住宅周辺を通る予定便数を基にしており、便の走行距離、目的地への到達しやすさ、実際の空席や混雑は測っていない。したがって、定員調整後の都市圏平均が人口増を上回っても、各地域の移動需要が満たされたとは言えない。
現場への応用案
編集上の応用案:都市開発を解説する際は、集合住宅戸数、実際の運行本数、車両定員を反映した供給力を別々に示すと、住宅の近くに交通があることと、増える住民に対する供給の変化を読み分けやすい。都市圏平均に自治体・路線別の1人当たり便数を添える構成も考えられる。これは論文の結果を伝えるための編集提案であり、論文が検証した施策ではない。
現場で確かめるには
編集上の導入時の検証案:新たな集合住宅計画を評価するなら、完成前後の戸数と周辺人口、徒歩圏の時刻表上の便数、車両定員を同じ範囲・年度で記録し、路線別の1人当たり供給を点検する。乗車実績や混雑データも得られれば併記し、定員調整後便数が実際の利用可能性をどれほど表すか確かめる。地域差を比べる際は、バスを含むかも明示する。これらは実務に向けた検証案であり、本研究で実施された追加分析ではない。
解説は原文の要旨・本文の確認範囲に基づきます。AIで作成し、同じモデルで原文との照合を行っています。全記事の人手による校閲は完了していません。「現場への応用案」「現場で確かめるには」は編集上の検討案です。
