有料道路の開通と地方道路整備はどう結び付くか――インドネシア13自治体の分析
Effects of toll road construction on local road projects in Indonesia
ジャカルタ―バンドン地域の道路事業を比べ、有料道路ゲートの開通時期や周辺の都市化と、地方道路事業との関連を調べた研究です。
この論文のポイント
- ジャカルタ―バンドン地域の道路事業をセル単位に整理し、地方道路事業と国道・州道事業を比較した。
- 料金所の開通時期・距離と、住宅地・人口の変化を加えたモデルは、事業属性を用いた基準モデルより適合が高かった。
- 分析対象は承認済み等の事業に限られ、未採択事業の実現や有料道路整備の因果効果を判定するものではない。
背景と課題
インドネシアでは、国が有料道路への投資を担い、市・県などの自治体が地方道路を整備する。有料道路を地域の交通網に生かすには周辺道路との接続が重要だが、整備を決める主体は同じではない。地方道路には、開通を見越して計画されるものも、沿線の住宅開発や人口増加に対応するものもありうる。
論文は前者を有料道路整備との「直接」の関係、後者を都市開発を介した「間接」の関係として整理し、事業の性質や行政の関与も併せて分析する。ただし、二種類の関係を統計モデル上で分けることは、それぞれの因果経路を実証することとは異なる。
研究の方法
対象はジャカルタ―バンドン回廊の13自治体で集めた道路事業で、比較には地方道路のほか国道・州道事業も含めた。自治体資料、地理情報、各自治体の担当者への半構造化インタビューを用い、担当者は有料道路と交通上のつながりがあると考える事業の確認にも加わった。維持管理は除き、完成済み、建設中、資金を確保した計画段階の事業を扱う。要旨は94事業、データ節は96事業と記し、件数は一致しない。分析では事業の道路区間を格子状のセルに対応付け、土地利用・人口のデータがそろう、一辺10メートルのセル5,994個を観測単位とした。同じ事業が複数セルを通れば、事業属性の値は重複しうる。
各セルに対応する事業が地方道路か、比較対象の国道・州道かを二値の目的変数とする。説明変数には事業費、延長、新設かどうか、所要時間短縮という目的、都市部かどうか、上位政府の関与、地域の空間計画への記載などを用いる。有料道路との位置・時間の関係は、道路区間から最寄りの料金所までの直線距離と、事業の着工年からその料金所の開通年を引いた年差で表す。年差は開通前と開通以降に分ける。都市開発については、2004年と2013年の住宅地・工業用地の変化、2000~2010年と2010~2015年の人口変化を整理した。相関する「新設」と「時間短縮」、「空間計画への記載」と「延長」は、それぞれ組み合わせた変数も使う。
次に、二値ロジットモデルを四つ推定する。これは説明変数に応じて地方道路に分類される確率を求める方法で、係数はその確率そのものではなく、地方道路となるオッズの対数の変化を示す。基準モデルには事業・行政の属性を置き、直接モデルには距離と年差、間接モデルには土地利用と人口の変化を追加する。統合モデルには双方を入れる。有意水準5%を基準に変数を絞り、適合指標と対数尤度比検定で、変数の追加による改善を比較した。さらに、ほかの変数を固定して連続変数の値を変え、推定確率がどれほど動くかを弧弾性値で調べる。入力された本文では確率式や弾性値の式が抽出されておらず、その厳密な記載は確認できない。得られるのは対象事業内での分類確率と変数間の関連であり、未採択事業の採択確率ではない。
この研究の新しさ
国の有料道路と自治体が担う地方道路を、権限の異なる道路網の接続という観点から一緒に扱った点が特徴である。料金所の開通時期・距離と、住宅地・人口の変化を、共通の事業属性を踏まえた別々のモデルと統合モデルで比較した。担当者への聞き取りを事業の確認と意思決定に関わる属性の収集に用いたことも、この分析の特徴である。
従来研究との違い
基準モデルに有料道路関連の変数を加えた直接モデルと、都市開発関連の変数を加えた間接モデルは、いずれも適合が改善したと報告される。表のR²は基準モデル0.61、直接モデル0.85、間接モデル0.62、統合モデル0.86で、用意した四つの構成では統合モデルが最も高い。対数尤度比検定でも変数追加による改善が示された。ただし、これはモデルの統計的な比較であり、「直接効果」が「間接効果」より因果的に大きいと測った結果ではない。
結果と評価
統合モデルでは、開通後の年差、住宅地の変化、2010~2015年の人口増加に、地方道路への分類と正の関連が示された。開通前の年差に対応する変数の係数は負で、著者らは、開通前に始まる地方道路事業は開通時期に近い年に着工する傾向があると解釈する。料金所までの距離の係数も正で、地方道路事業は比較対象の国道・州道事業より料金所から遠い傾向にある。工業用地の変化は間接モデルでは有意だったが、統合モデルには残らなかった。
これらは、収集された事業の中で地方道路に分類されることとの関連である。弧弾性値も、変数だけを動かしたときのモデル上の確率変化を示す。例えば統合モデルで料金所までの距離を10%増やした計算について、表は平均確率の相対変化を0.22%と報告する。実際に距離を変えれば地方道路が増える、という実験結果ではない。
限界・注意点
著者らは、対象が料金所へのアクセスからおおむね18キロメートル以内の、既に承認された事業に限られ、候補事業が実現するかどうかは判定できないと述べる。渋滞、道路容量、走行速度、政治的な予定などはモデルに含まれない。土地利用と人口の時系列も、道路整備と都市化の相互作用を追うには十分ではない。
編集上の注意として、複数セルは独立した別事業ではなく、要旨とデータ節で事業件数も異なる。観察された関連を、有料道路が地方道路整備を引き起こした証拠や、地域外の事業選定にそのまま一般化することはできない。
現場への応用案
【編集上の提案】幹線道路の計画を示す資料では、「開通前に検討する接続道路」と「周辺の人口・土地利用の変化に応じて検討する道路」を分けて整理してはどうか。国と自治体の計画を照らし合わせるための案であり、この整理方法の効果を論文が検証したわけではない。
現場で確かめるには
【編集上の検証案】別の地域に適用する前に、料金所の開通予定、自治体の事業台帳、採択されなかった候補、人口・土地利用の更新履歴を、時点と対象範囲をそろえて確認したい。担当部署間で各道路の目的を照合し、開通前後の着工時期に加え、交通量、既存道路の容量、計画変更も調べる。これにより、対象事業内の分類という本研究の範囲を超えて、事業選定を検討するために何が不足しているかを確かめられる。
解説は原文の要旨・本文の確認範囲に基づきます。AIで作成し、同じモデルで原文との照合を行っています。全記事の人手による校閲は完了していません。「現場への応用案」「現場で確かめるには」は編集上の検討案です。
