目的地の道路網は移動手段の組み合わせとどう関わるか――ポートランド都市圏の自宅発着ツアー分析
Non-linear effects of built environment factors on mode choice: A tour-based analysis
自宅を出て戻るまでの移動を一単位として見ると、目的地周辺の道路網と交通手段の併用との関連が見えてくる。
この論文のポイント
- 2011年のオレゴン州交通・活動調査を使い、自宅発着ツアーの手段を併用も含む6分類で分析した。
- 比較したランダムフォレストの中では、SMOTEを用いたモデルのマクロ平均F1値が0.561で最も高かった。
- 目的地の平均街区面積と交差点密度は予測への寄与が比較的大きかったが、整備による因果効果は検証していない。
背景と課題
通勤の帰りに買い物をする場合、通勤区間の手段は、その後の立ち寄り先も考えて選ばれうる。本研究の「ツアー」は、自宅などを出発し、同じ場所へ戻るまでの一連の移動を指す。従来の区間ごとの分析や、ツアーを代表する手段を一つだけ選ぶ分析では、公共交通で目的地へ行き、周辺を歩く行動を捉えにくい。著者らは、道路網や土地利用、交通施設などの「建造環境」と、ツアー内で使う手段の組み合わせとの関連を調べた。
研究の方法
観測単位は、2011年オレゴン州交通・活動調査から得たポートランド都市圏の自宅発着ツアーである。本文はデータ洗浄後の対象を9,969件と記す。予測する目的変数は、各ツアーで使われた手段の組み合わせだ。運転者と同乗者を「自動車」、徒歩と自転車を「徒歩・自転車」にまとめ、「自動車のみ」「徒歩・自転車のみ」「公共交通のみ」と、それぞれの二手段を併用する場合の計6分類に整理した。三手段の併用は「自動車+公共交通」に含めた。説明変数には、ツアーの総距離、立ち寄り回数、活動の配置や目的、世帯の車保有台数などを用いた。建造環境は居住地と目的地の周囲4分の1マイルで測り、交差点密度、平均街区面積、停留所密度などを作成した。説明変数どうしの重なりは分散拡大係数で点検した。ただし、立ち寄り先が複数あるツアーで目的地側の値をどう定めたかは、本文からは分からない。
次に、変数の値でデータを分ける決定木を多数組み合わせるランダムフォレストで、6分類を予測した。木の本数、分岐時に調べる変数の数、木の最大深さ、分岐に必要な最少データ数を候補から選び、10分割交差検証を3回繰り返した。分類の件数に偏りがあるため、少数派の複製、多数派の間引き、少数派の人工標本を作るSMOTEを交差検証の内側で比較した。モデル選択では、予測の適合率と再現率を合わせたF1値を分類ごとに求め、6分類を等しく扱うマクロ平均を重視した。最終的に選んだSMOTE使用モデルの設定は、木190本、分岐候補変数5個、最大深さ60、分岐に必要な最少データ数10である。
予測後は、SHAP値で変数の寄与を調べた。各ツアーについて変数ごとの予測への寄与を求め、その絶対値を全ツアーで平均したものが重要度となる。値が大きいほど予測への寄与は大きいが、絶対値なので関連の向きは示さない。累積局所効果(ALE)図では、変数が近い値の間で変わったときの予測の差を積み重ね、曲線的な関連を読んだ。本文にはALEの区間設定など、図を再現するための細部は記されていない。
この研究の新しさ
特徴は、ツアーを一つの代表手段に要約せず、手段の併用を含む6分類を予測した点にある。本文によると、コンパクトな市街地を示す変数は「自動車のみ」と「自動車+徒歩・自転車」で逆方向に関連する場合がある。両者を一括して自動車利用と数えると、この違いは見えにくくなる。
従来研究との違い
再標本化なし、多数派の間引き、通常の少数派の複製、SMOTEを使う各ランダムフォレストを比較した。マクロ平均F1値はSMOTEが0.561で、再標本化なしの0.473を上回った。ただし、少数派の「自動車+徒歩・自転車」のF1値はSMOTEでも0.262だった。従来の区間単位の分析や代表手段だけを使う分析との、同一データによる予測性能比較は示されていない。
結果と評価
SHAPによる重要度の合計は、ツアー属性が43.9%、目的地の建造環境が26.5%、居住地の建造環境が14.0%だった。個別にはツアー総距離が最上位で、建造環境では目的地の平均街区面積と交差点密度が上位に入った。これらは予測モデルへの寄与の大きさであり、整備の効果量ではない。
ALE図について結果節は、目的地の交差点密度が1平方マイル当たり45以下の範囲では「自動車のみ」と正に関連し、それを超えると負に関連すると説明する。また、目的地の停留所密度が1平方マイル当たり40~65の範囲で、「自動車のみ」との負の関連が強いとする。いずれも調査地域のデータとモデルで見た関連であり、交差点や停留所を増やした際の因果効果を測った値ではない。
限界・注意点
著者らが挙げる限界は、選ばなかった手段の所要時間と費用を含めていないこと、歩きやすい地域を好む人がそこに住む「居住地の自己選択」を十分に扱えていないこと、ポートランド都市圏で見た値の境目を他地域へ一般化できないことだ。さらに、手段の選択もツアーの組み方に影響しうるため、両者の関連を一方向の効果とは解釈できない。
編集上の確認事項もある。本文の洗浄後の対象9,969件と、6分類の表に載る件数の合計9,694件は一致しない。また、交差点密度が45/平方マイル以下の場合の関連の向きについて、結果節と政策的含意の節に食い違いがある。境目を計画基準として使う前に、集計と記述を原データで確かめる必要がある。
現場への応用案
【編集上の提案】交通手段を紹介する記事や計画資料では、「自動車のみ」と「自動車+徒歩・自転車」を分けて表示する。目的地周辺で歩いたり自転車に乗ったりする行動が、自動車利用率の一つの数字に埋もれずに伝わる。この表示方法自体は、論文で検証されたものではない。
現場で確かめるには
【編集上の検証案】別の都市圏で同じ6分類と建造環境指標を作り、分類ごとのF1値とALE曲線を比べる。特に交差点密度が45/平方マイルの前後に十分な観測があるか、複数の立ち寄り先から目的地の値を決める方法を変えても曲線が安定するかを確認する。施策の効果を判断するには、整備前後の比較や居住地選択を考慮した別の研究設計が必要となる。
解説は原文の要旨・本文の確認範囲に基づきます。AIで作成し、同じモデルで原文との照合を行っています。全記事の人手による校閲は完了していません。「現場への応用案」「現場で確かめるには」は編集上の検討案です。
