無料駐車場は通勤と走行距離にどう関係するか――カリフォルニア州の交通調査
Parking, travel behavior, and working from home
自宅や職場の無料駐車は自動車利用と関連していたが、この調査から駐車施策の因果効果や在宅勤務が車移動を減らすかどうかは判断できない。
この論文のポイント
- 2010~2012年のカリフォルニア州の調査では、世帯の87.9%に自宅の抱き合わせ駐車があると推定され、職場駐車が記録された就業者の79.2%では無料だった。
- 職場の無料駐車は自動車通勤の高いオッズと、自宅の抱き合わせ駐車は一日の自動車走行距離の長さと関連した。
- 調査の在宅勤務指標には自宅事業者も含まれるため、遠隔勤務が車移動を増減させるかは判定できない。
背景と課題
車で移動するには、目的地で車を置く場所が要る。その料金や利用しやすさは車を使う負担に関わるが、大規模な交通調査には訪問先の駐車場所と料金の記録が少ない。本研究は、駐車場が家賃や住宅の購入価格に含まれる「抱き合わせ駐車」と、職場の無料駐車に着目し、車の保有、通勤手段、一日の移動との関連を調べた。
在宅勤務で通勤がなくなっても、買い物などの移動まで減るとは限らない。論文は駐車条件と在宅勤務の関連、在宅勤務と一日の自動車走行距離の関連も検討する。
研究の方法
主な入力は、2010~2012年のカリフォルニア州世帯交通調査(CHTS)の旅行日誌である。観測単位は分析に応じて個人または世帯とし、各移動の手段と距離から、一日の車・公共交通の移動回数と自動車走行距離(VMT)を合計する。通勤手段や「自宅で働く」状態は、個人では該当の有無、世帯では就業者に占める割合などに整理する。ただし「自宅で働く」は、勤務先の仕事を遠隔で行う人と自宅で事業を営む人を区別できない。職場駐車は調査日に職場へ行った移動で確認し、料金がない場合と、料金を雇用主が払い戻す場合を無料とする。
自宅駐車はCHTSで直接測れないため、2011年の米国住宅調査(AHS)から推定する。まずAHSで、車庫や私道などの敷地内駐車が住宅価格に含まれるかを二値にする。次に、両調査に共通する住宅形式、世帯人数、持ち家かどうか、中心市街地の立地などを説明変数として、抱き合わせ駐車がある確率をロジスティック回帰で求める。この回帰では、各条件と駐車の有無の対数オッズとの関連を係数で表し、それを確率に変換する。大都市圏の内外で別々に推定し、都市圏内のモデルには都市圏ごとの差も入れる。得た係数をCHTSの各世帯に当てはめ、AHSで「ある」を「ない」とする誤りと逆の誤りがほぼ同率になる閾値で、推定確率を駐車の有無に変える。
最後に、この推定した自宅駐車と観測した職場駐車を主な説明変数として交通行動を分析する。通勤手段や在宅勤務などの二値・世帯内割合にはロジスティック回帰、移動回数には負の二項回帰、ゼロを下限とするVMTにはトービット回帰を用いる。車の保有台数、免許保有者数、所得などの属性、地区類型、郡なども考慮し、係数や平均限界効果から関連の方向と大きさを読む。職場へ行かなかった人の職場駐車条件は分からず、職場の無料駐車と在宅勤務の直接の関連は推定できない。
この研究の新しさ
訪問先の駐車料金と路上・路外の区別を記録した旅行日誌から、無料駐車の広がりを移動単位で示した。住宅調査で推定した自宅駐車も結びつけ、自宅と職場の駐車条件を個人・世帯の交通行動と照合している。
従来研究との違い
論文が紹介する先行研究には、駐車を詳しく測る代わりに対象地域や住宅の種類が限られる研究と、広域を扱う代わりに駐車や移動の情報が限られる研究がある。本研究は州全域の旅行日誌を使う一方、自宅駐車は直接観測していない。また、先行研究の住宅割り当てを利用した分析とは異なり、駐車条件の因果効果を特定する設計ではない。
結果と評価
記述集計では、抱き合わせ駐車があると推定された世帯は87.9%、職場の無料駐車が記録された就業者ではその割合が79.2%だった。車が駐車されていた時間の中央値は一日23時間である。調査日に通勤した人の単純集計では、職場駐車が無料の人の94.5%が単独で運転し、無料でない人では36.9%だった。これらは対象とする観測単位が異なる数値である。
属性などを考慮した個人単位の通勤モデルでは、職場の無料駐車がある人の自動車通勤のオッズは22.5倍、公共交通通勤のオッズは0.13倍だった。オッズは「選ぶ確率」を「選ばない確率」で割った値で、確率そのものの倍率ではない。自宅の抱き合わせ駐車と通勤手段の係数は統計的に有意ではなかった。一方、世帯単位のVMTモデルでは、自宅の抱き合わせ駐車に対応する平均限界効果は一日約11マイルの増加だった。在宅勤務指標とVMTにも正の関連が見られたが、この指標には自宅事業者も含まれる。
限界・注意点
著者が述べる限界は、調査が2010~2012年のカリフォルニア州に限られること、自宅駐車を別調査から推定していること、在宅勤務と自宅事業を区別できないこと、在宅勤務者の職場駐車を観測できないことである。自宅駐車の推定モデルはAHSを訓練用75%と検証用25%に分けて確かめ、識別性能を表すAUCはそれぞれ0.88、0.89だった。ただし個々の住宅の分類が正しい保証はなく、著者も居住地などの自己選択を明示的には調整していない。結果を駐車施策の因果効果や現在の他地域での効果として扱うには、追加の検証が必要である。
現場への応用案
編集上の応用案として、交通政策の記事では「通勤がなくなること」と「一日の車移動全体が減ること」を別の問いとして示せる。駐車の料金と利用条件、通勤手段、仕事以外の移動を並べれば、読者が本研究で観測された関連の範囲を追いやすい。
現場で確かめるには
編集上の導入時の検証案として、地域の駐車施策を評価する際は、変更前後で同じ対象者の駐車料金、車の保有、通勤手段、一日の全移動を記録する。在宅勤務者には、勤務先の有無と出勤した場合の駐車条件も尋ねる。施策を導入していない比較地域も調べ、対象者や時期の違いを確かめて変化を解釈したい。
解説は原文の要旨・本文の確認範囲に基づきます。AIで作成し、同じモデルで原文との照合を行っています。全記事の人手による校閲は完了していません。「現場への応用案」「現場で確かめるには」は編集上の検討案です。
