乗車できない区域への降車は、タクシーの空車走行をどれだけ生むか
Spatial regulation of taxicab services: Measuring empty travel in New York City
ニューヨーク市の緑色タクシーについて、降車後に乗車可能な区域へ戻ると仮定した走行距離を、乗車記録と道路網から推計した研究です。
この論文のポイント
- 対象期間の緑色タクシー359,929乗車のうち、74,781乗車(20.8%)が次の乗車を扱えない場所で終わった。
- 仮定した復帰移動の推計距離は、ArcGISで約33.3万km、Google Mapsで約49.4万km、Mapzenで約49.7万kmだった。ArcGISの総距離にはニューアーク空港分が含まれない。
- 車両ごとの連続した乗車と実際の経路は分からず、距離は観測値ではなく復帰先と経路の仮定に基づく。
背景と課題
ニューヨーク市は、黄色タクシーの利用が少なかった地域でサービスを増やすため、緑色タクシーを導入した。緑色タクシーは市内の広い範囲で乗客を乗せられる一方、マンハッタン中心部と地域の3空港では乗客を降ろせても、新たに乗せることはできない。そこで降車した運転者が次の客を探すには、乗車が許される区域へ移動する必要がある。論文は、この区域規制に伴い得る「空車走行」、つまり乗客を乗せずに走る距離を調べる。
研究の方法
分析の単位は、2015年10月12~19日の対象期間に記録された、緑色・黄色タクシーの有料の1乗車である。各記録には乗車・降車地点や時刻などがある。ただし、走行中に通った道路は記録されず、同じ車両の次の乗車も特定できない。著者らはまず、緑色タクシーの降車地点のうち、次の乗車が禁止されるマンハッタン中心部または3空港にあるものを抽出した。復帰先の候補には、乗車可能な交通分析ゾーン(TAZ:交通需要を集計する区域)の中心点を使った。市内のTAZは2,243ある。道路距離を計算するため、市の道路網データLIONを整え、道路区間の標高値を数値に変換した。
次に、抽出した各降車地点から、乗車可能なTAZの中心点までの道路経路を求めた。マンハッタン中心部からは、道路網上で最も近い中心点へ向かうと仮定し、その距離を各降車の推計値にした。空港からは乗車可能な全TAZの中心点まで距離を求め、実際の緑色タクシーの乗車地点が各TAZに占める割合で重み付けした。例えば、あるTAZが全乗車地点の15%を占めれば、空港から戻る車の15%もそこへ向かうと仮定する。空港1件当たりの距離は、行き先ごとの道路距離にその割合を掛けて足した値となる。遠いTAZでも割合が大きければ、推計距離への寄与は増える。
経路計算には、距離が最短となる道を選ぶ設定のArcGISを使い、Google MapsとMapzenの経路案内でも距離を求めた。最後に降車ごとの推計距離を足し、行き先別と対象期間全体の空車走行距離を示した。出力は、実際に車両が通った経路の記録ではなく、復帰先と経路の仮定に依存する推計値として読む必要がある。
この研究の新しさ
乗車を認める場所と降車を認める場所のずれを、降車後の車両走行距離として示した点に特徴がある。著者らは緑色タクシーの区域規制を利用し、有料乗車の記録だけでは見えない復帰移動を道路網上で推計した。ただし、規制がなかった場合との実測比較によって追加距離を特定した研究ではない。
従来研究との違い
制度上、黄色タクシーはニューヨーク市内のマンハッタン中心部や空港でも乗車を扱えるが、緑色タクシーは扱えない。黄色タクシーにも、市外のニューアーク空港で降車した後の空車復帰はあり得る。経路計算では、ArcGISの最短距離経路より、Google MapsとMapzenが返した経路の距離が長かった。著者らは、後者が道路の速度などを踏まえて所要時間を短くする経路を選ぶことを主な理由に挙げる。ただし、Google Mapsの経路情報は照会時刻に左右され、Mapzenは照会時の交通情報を持たなかった。両者を対象期間の実際の交通状況を再現した経路とは扱えない。
結果と評価
対象期間の緑色タクシー359,929乗車のうち、74,781乗車(20.8%)が次の乗車を扱えない場所で終わった。最も多いのはマンハッタン中心部の66,208乗車だった。推計した空車走行距離は、ArcGISで約33.3万km、Google Mapsで約49.4万km、Mapzenで約49.7万kmである。ただし、表ではArcGISのニューアーク空港分が算出されていないため、3つの総距離は完全に同じ対象を足した比較ではない。また、これらは仮定した復帰移動の距離であり、規制によって実際に増えた距離の直接測定値ではない。
限界・注意点
著者らが挙げる主な限界は、同じ車両の連続した乗車を結び付けられず、実際の経路も分からないことだ。推計は、降車後に運転者が次の客を探し、仮定した行き先へ移動するという前提に立つ。需要は場所と時間で異なるため、禁止区域で降車した後の空車走行をすべて規制だけが生んだ追加距離とは言えない。対象はニューヨーク市の特定期間であり、他都市や別の時期の距離へそのまま一般化することもできない。
現場への応用案
【編集上の応用案】区域規制を解説する際は、乗車禁止区域への降車地点と、そこから乗車可能な区域への想定経路を地図上で対にして示すと、規制と空車走行の関係が伝わりやすい。距離には経路計算による幅と、ArcGISではニューアーク空港分が含まれない条件を添える。空車走行の推計量すべてが、規制を緩めれば消えるかのような表現は避ける。
現場で確かめるには
【編集上の導入時の検証案】禁止区域で少数の例外的な乗車を認める制度を検討するなら、車両を追跡できる記録で、降車後の実際の経路、次の乗車地点、待ち時間を確かめたい。時間帯や地域ごとに空車走行の変化を調べ、緑色タクシーがもともと対象とした地域で利用しやすさが保たれるかも測る。例外制度は論文中の政策案だが、その効果をこの研究が検証したわけではない。
解説は原文の要旨・本文の確認範囲に基づきます。AIで作成し、同じモデルで原文との照合を行っています。全記事の人手による校閲は完了していません。「現場への応用案」「現場で確かめるには」は編集上の検討案です。
