本文へ移動
交通と土地利用

ドイツ439地区の通勤は分散したか――1995年と2005年の移動量と接続を比較

The evolution of the commuting network in Germany: Spatial and connectivity patterns

Roberto Patuelli / Aura Reggiani / Peter Nijkamp / Franz-Josef Bade
Journal of Transport and Land Use

原文PDFを読む ↗論文の公開ページ ↗

ドイツの地区間通勤を1995年と2005年で比べると、地区への接続の偏りはやや弱まり、地区同士の結びつきは強まっていた。

この論文のポイント

  • 1995年と2005年のドイツ439地区間について、賃金労働者の居住地・勤務地別通勤人数を分析した。
  • 入次数集中度は0.33から0.31へ低下し、クラスタリング係数は0.59から0.63へ上昇した。
  • 流入開放度と流入人数のどちらを候補選定に使うかで、多基準分析の対象地区と拠点の順位が変わった。

背景と課題

通勤者が多く集まる地区は、必ずしも多くの地区と結ばれているわけではない。また、中心都市の外側にある地区でも、行き来する人の割合や周辺との接続から見れば重要な拠点になり得る。この論文は、通勤の「人数・割合」と、地区間の「接続」を分けて調べ、ドイツの通勤ネットワークの変化を検討した。

対象は1995年と2005年の賃金労働者で、自営業者は含まない。分析単位はドイツの439行政地区であり、著者らは地区の都市化類型も参照して、中心都市と周辺地区の違いを読んでいる。

研究の方法

入力は各年の439地区×439地区のOD表、すなわち居住地と勤務地の組み合わせごとの通勤人数表である。各セルには、地区iに住み地区jで働く人数が入る。まず勤務地jについて、他地区から来る人数をjで働く人数全体で割り、「流入開放度」を出す。居住地iについては、他地区へ働きに出る人数をiに住む就業者数で割り、「流出開放度」を出す。両者の平均を地区の総合的な開放度とする。これらは地区境界を越える通勤の割合であり、同じ地区内の通勤は分子に入らない。

次に、地区を点とし、地区間に通勤があれば居住地から勤務地へ向かう接続として扱う。これは道路・鉄道そのものではなく、OD表から作る「論理的なネットワーク」である。勤務地に通勤者を送る地区の数を入次数と呼ぶ。入次数と流入開放度をそれぞれ大きい順に並べ、順位に対して値がべき関数的に下がる場合と指数関数的に下がる場合の適合度を比較する。入次数を、接続可能な他の438地区の数で割った値が相対入次数である。全地区について、最大の相対入次数との差を足し、論文の式に従って437で割った入次数集中度は、接続が一部の地区に偏る程度を表す。さらに、ある地区に直接つながる地区同士の実際の接続数を、可能な接続数で割ったクラスタリング係数を求め、地区間の結びつきの密さを見る。通勤流が行先にどれほど分かれるかは、各流れの割合を用いるエントロピーでも調べる。別途、地区間の通勤が1000人を超える接続だけを残し、まとまりの内部で各地区が少なくとも4地区から流入を受ける「4コア」を抽出する。

最後に、候補地区を選んで多基準分析を行う。各地区の入次数と流入開放度をそれぞれその年の最大値で割り、二つの値の積を選定指標とする。両年とも上位30地区に入る26地区について、流入・流出開放度を使う移動面と、相対入次数・クラスタリング係数を使う接続面を別々に順位付けし、両面の結果を統合する。流入開放度を流入人数に替えて候補を選び直す分析も行う。本文は等重みと昇順・降順の重みを使うと記すが、多基準分析で各順位が決まる詳細な計算手順は示していない。

この研究の新しさ

この研究の要点は、域外から働きに来る人の割合、通勤元となる地区の数、接続先同士の結びつきを別々に測り、最後に合わせて評価した点にある。さらに、地区の規模で割った流入開放度を重視する場合と、割らない流入人数を重視する場合を比べ、何を「拠点」とみなすかで候補群や順位が変わることを示した。

従来研究との違い

入次数と流入開放度を順位順に並べた分布には、両年ともべき関数より指数関数のほうがよく適合した。一方、規模で割らない流入人数の分布では、べき関数の適合度が指数関数を上回った。1995年の流入人数では、適合度を表す決定係数がそれぞれ0.9447、0.9163である。著者らは後者を、少数の地区に大きな流入が集まる「ハブ」的な傾向の可能性と読む。ただし、適合度だけでネットワークの生成過程を確定したわけではない。小さな通勤流も接続と数える入次数は、接続とみなす人数の下限に影響される。

結果と評価

全439地区の指標では、1995年から2005年にかけて入次数集中度は0.33から0.31へ低下し、クラスタリング係数は0.59から0.63へ、エントロピーは8.23から8.38へ上昇した。著者らは、流入接続の偏りがやや弱まる一方、地区間の相互接続と通勤流の分散が進んだと解釈する。1000人超の流れに限定した4コアは13地区から33地区になった。この地区数は、設定した人数の閾値と4コアという条件の下での結果である。

流入開放度を使って候補を選んだ多基準分析では、ミュンヘン市とは別のミュンヘン周辺地区が総合順位で両年とも1位だった。流入人数を使って候補を選び直した分析では、メットマンが1995年の5位から2005年の1位になった。これらはそれぞれ選ばれた候補群内での順位であり、順位変動だけから通勤の変化の原因は分からない。

限界・注意点

著者らは、分析した接続が物理的な交通網を表さないことを踏まえ、通勤流とインフラの共同分析を今後の課題とする。距離・所要時間、アクセシビリティー、労働市場の特性、労働市場とネットワークのどちらが変化をもたらすかという因果の方向も未解明としている。多基準分析では評価基準間に相関がないと仮定しており、その確認も課題である。地区の広さや境界は域外通勤の割合を左右し得るため、別の地域単位や時期に同じ拠点像が成り立つとは限らない。

現場への応用案

【編集上の応用案】地域の通勤拠点を紹介する際は、流入人数だけで順位を示さず、域外通勤の割合、通勤元の広がり、接続先同士の結びつきを並べて見せるとよい。中心都市と周辺地区で「人数は多いが割合は低い」といった違いを示せば、拠点の意味を読者が区別しやすい。

現場で確かめるには

【編集上の導入時の検証案】同様の指標を施策検討に用いるなら、比較する年の地区境界と雇用データの対象範囲を確認したうえで、接続とみなす最小通勤人数や地区の集約単位を変えて再計算したい。候補地区の選び方や多基準分析の重みを変えても、重点地区の順位が保たれるかも確かめる必要がある。

解説は原文の要旨・本文の確認範囲に基づきます。AIで作成し、同じモデルで原文との照合を行っています。全記事の人手による校閲は完了していません。「現場への応用案」「現場で確かめるには」は編集上の検討案です。

← 解説の一覧へ原文PDFを読む ↗