リスボンの自治体計画は駅周辺を開発予定地に選んだか
The influence of transport infrastructures on land-use conversion decisions within municipal plans
1990年代のリスボン都市圏の自治体計画では、駅に近い土地ほど開発予定地になりやすいという単純な傾向は、土地や地域の条件を考慮すると確認できなかった。
この論文のポイント
- 1990年代に承認されたリスボン都市圏の自治体基本計画について、未市街化地46,273区画の開発予定地指定を分析した。
- 駅距離だけでは近い区画ほど指定されやすかったが、土地・地域の条件を考慮すると、駅への近さは指定を後押しする正の要因として確認されなかった。
- 駅から1.2km以内で開発予定地に指定されなかった未市街化地は約70km²あり、著者は駅周辺の農地や森林の価値も考慮する必要を指摘する。
背景と課題
公共交通指向型開発(TOD)は、公共交通の駅周辺に開発を集め、郊外の農地や森林などの市街化を抑えようとする考え方である。ただし、駅の近くで開発が起きたとしても、自治体が駅周辺を優先して計画したとは限らない。この論文が調べるのは実際の開発結果ではなく、ポルトガルのリスボン都市圏で、自治体基本計画(PDM)が未市街化地を開発予定地に指定したかどうかである。
対象のPDMは主に1990年代に承認された。土地消費の抑制を掲げる国・地域計画は後年に作られており、著者は、それ以前のPDMで駅への近さが開発予定地の選択に結び付いていたかを問う。
研究の方法
観測単位は、PDMの土地利用区分で区切られた面積の異なる区画である。まず、1985~1987年の衛星画像に基づくCOS-90土地利用データとPDMの地図を用い、自治体ごとに異なる土地利用区分の名称を比較可能な区分にそろえる。COS-90で農地、森林などの未市街化地とされ、PDM承認までに市街化していない区画を分析対象にする。目的変数は、PDMで開発予定地に指定されれば1、されなければ0という値で、全未市街化地のモデルでは46,273区画を扱う。駅との距離は区画の中心から最寄りの公共交通駅までの直線距離で測り、800m以内、800~1,200m、1,200~2,000m、2~5km、5~10kmに区分する。10km超が係数を比べる基準となる。ほかに区画面積や傾斜、都心・既存市街地・高速道路入口との位置関係、地区の人口や過去の市街化、農業・生態系保護区域の割合などを用意する。人口や保護区域の情報には、区画より広い行政単位で測った値も含まれる。
次に、開発予定地となる確率をpとし、「指定される確率/指定されない確率」であるオッズp/(1−p)の対数を、各変数に係数を掛けて足した値で表すロジットモデルを推定する。駅距離だけのモデルを先に計算し、土地・地域の条件を加えたモデルと比べる。同じ条件なら、ある距離帯の係数が正のときは10km超の区画より指定のオッズが高く、負のときは低い。係数の指数を取ったオッズ比が1を下回れば、基準に対するオッズの低さを表すのであって、指定確率そのものではない。著者は連続変数と対数オッズの関係を調べ、直線的でなかった都心・副都心までの距離を対数に変換した。また、近い区画で結果が似る空間自己相関を近隣8区画に基づいて確認し、周辺区画の指定状況を反映する変数をモデルに加えた。最後に未市街化地全体と農地・森林などの種類別に係数を読み、駅への近さと計画上の指定との関連を検討する。
この研究の新しさ
この論文は、土地が後に市街化した要因ではなく、自治体がPDMでどの土地を開発可能と位置付けたかに焦点を当てる。計画上の指定を目的変数にすることで、公共交通に沿った開発が自治体の土地利用選択に表れていたかを広域で調べた。名称や詳しさがそろわない複数のPDMの地図を、共通の区分に整理した点も分析を支えている。
従来研究との違い
駅距離だけを使うモデルでは、駅に近い区画ほど開発予定地に指定されやすかった。これに対し、土地や地域の条件、周辺区画の指定状況を加えた全未市街化地モデルでは、10km超を基準とする駅から10km以内の各距離帯の係数が負になった。最も近い800m以内のオッズ比は0.848で、統計上の有意水準は10%である。ほかの距離帯のオッズ比は約0.65だった。したがって、距離だけで見える傾向を、自治体が駅周辺を優先して指定した証拠とは読めない。これは条件をそろえた統計上の関連であり、駅の位置が指定を変えたという因果効果の推定ではない。
結果と評価
全未市街化地モデルの観測数は46,273区画で、論文が報告するNagelkerkeの擬似決定係数は0.675、一致率は95.2%である。周辺区画の指定状況を反映する変数を加える前の一致率は83.4%だった。これらは観測したPDMの指定への当てはまりを示す数値で、別の時期や都市圏での予測性能を示すものではない。
面積集計では、駅から1.2km以内に、PDMが開発予定地にしなかった未市街化地が約70km²あった。一方、駅から2~5kmの帯で開発予定地にした面積は約71km²だった。この比較は駅周辺に別の配置を検討する余地を示すが、近接地のすべてが開発に適することを意味しない。
限界・注意点
著者が挙げる限界は、公共の規制をPDMによってのみ捉えたことと、開発予定地ごとに異なる許容高さ・密度を分析していないことである。COS-90には欠測もあり、都市圏の203地区のうち、データが地区面積の70%超を覆う171地区が対象となった。分析範囲は都市圏面積の73.4%、1991年人口の88.6%を占める。本研究だけでは、計画指定がその後の市街化を引き起こしたか、TOD政策一般が有効かは判断できない。周辺区画の指定状況を使ったモデルの転用可能性は、編集上さらに検証すべき事項である。
現場への応用案
編集上の提案として、自治体計画を紹介する記事では「駅周辺で実際に市街化した土地」と「計画で開発予定地に指定した土地」を別々に示すとよい。駅距離だけの集計と、土地・地域の条件を考慮した結果も並べれば、見かけの集積と計画上の選択の違いを読者が追いやすくなる。
現場で確かめるには
編集上の導入時の検証案として、計画改定を調べる際には、改定前後の地図を共通の土地利用区分にそろえ、指定の変化と改定後の実際の土地利用を照合する。駅周辺の未市街化地を開発候補とみなす前には、農地・森林としての価値、保全上の制約、許容される高さや密度を区画ごとに確かめたい。周辺区画の指定状況を使うモデルを評価に転用する場合は、その変数が評価対象の指定結果を含むため、予測性能の解釈にも注意が要る。
解説は原文の要旨・本文の確認範囲に基づきます。AIで作成し、同じモデルで原文との照合を行っています。全記事の人手による校閲は完了していません。「現場への応用案」「現場で確かめるには」は編集上の検討案です。
