バスと自転車の関係は停留所の間隔でどう変わるか
Complementarity and substitution between public transport and bicycles
仮想都市の朝の通勤を再現し、自転車がバスの代わりになる条件と、停留所への足になる条件を調べた研究である。
この論文のポイント
- 仮想都市の3000人の朝の通勤を再現し、交通手段と出発時刻の見直しを反復計算した。
- バス運賃の無料化だけでは車の利用割合は下がらず、専用レーンと高頻度運行の組み合わせでは大きく下がった。
- 停留所に歩いて行きやすい条件では自転車とバスの競合が見られ、停留所を減らした条件では自転車・バスの乗り継ぎが増えた。
背景と課題
自転車道やバス専用レーンを整備すると、車からの転換だけでなく、バスと自転車の間でも利用者が移る可能性がある。自転車で通勤を完結できる人にとっては両者が競合する一方、停留所が遠ければ自転車がバスへのアクセスを助ける。著者らは、この関係が運行頻度、停留所の配置、専用レーンなどによってどう変わるかを、朝の通勤を対象に検討した。
研究の方法
対象は、郊外と中心業務地区を結ぶ長さ9 kmの幹線道路がある単一中心の仮想都市である。朝の通勤者3000人それぞれに自宅位置と希望到着時刻を割り当て、勤務先は中心部に置く。供給側には車線数、信号、歩道と横断箇所、バス停、運行間隔、駐車場を設定する。希望到着時刻は9時から9時30分の間に分布させる。初期設定の選択肢は車、バス、徒歩で、比較する条件に応じて自転車単独と、自転車で停留所へ行ってバスに乗る移動を加える。バス利用者には乗車前後の移動経路も割り当てる。停留所選びでは道路横断を交差点に限り、中心部と逆方向への歩行には小さな不利を付ける。
まず各人の交通手段と出発時刻を無作為に決め、交通シミュレーターSUMOで移動を再現する。車両や歩行者の動きから所要時間とバス待ち時間などを得る。バスは定員に達すると乗車できない。次に各人の「一般化費用」を計算する。これは手段固有の定数と運賃・燃料費などの金銭負担に、出発から到着までの時間、待ち時間への追加負担、希望時刻より早い・遅い到着への負担を加えた値である。徒歩と自転車には、設定距離を超えた分の二乗で増える身体的負担も加える。待ち時間や遅刻が増えれば、その項の費用が増す。同程度の距離に住む人の平均費用をμ、標準偏差をσとし、費用がμ+0.8σを超える人は選択を見直す。到着時刻のずれによる費用の割合が大きければ出発時刻を、そうでなければ交通手段を変更しやすくする。手段変更には、費用が低い手段ほど選ばれやすい多項ロジットを使う。変更者がほぼいなくなるまで再計算し、交通手段別の人数、費用、排出量を施策間で比べる。出発時刻の具体的な変更幅やロジットの係数は本文に示されていない。
この研究の新しさ
一人ずつの交通行動を追うミクロシミュレーションにより、信号や横断箇所、バスの定員、専用レーンのつながり方を明示している。例えば、バス専用レーンがあっても折り返し地点で車と交錯すれば、そこで生じる混雑が効果を大きく損なう。同じ枠組みに自転車単独と自転車・バスの乗り継ぎを加え、停留所への近さが両者の関係を左右することを示した。
従来研究との違い
基準設定の交通手段別の割合は、車68.4%、バス8.1%、徒歩23.5%だった。バス運賃を無料にした条件ではバスが9.0%に増えた一方、車も71.0%に増えた。著者らは、郊外側からの乗客が増えると中心部寄りの停留所で満員のバスが到着し、乗れない人の待ち時間が延びるためと説明する。バス専用レーンと高頻度運行を組み合わせた別の条件では、車38.0%、バス58.0%となった。ただし、専用レーンが折り返し地点まで連続しない場合、便益はほぼ失われるという。
結果と評価
自転車道を設けた複数の条件では、自転車の利用割合は約37%となり、条件によってはバスから自転車への移行も見られた。乗り継ぎを認めた条件同士で停留所を8か所から5か所に減らすと、自転車・バスの乗り継ぎ割合は6.0%から16.2%に増えた。停留所が遠いときは自転車がバスへの移動を補う、という解釈に沿う結果である。いずれも設定を変えた仮想都市内の比較であり、実都市での導入効果を測った数値ではない。
限界・注意点
著者らが挙げる限界には、単純化した単一中心の道路網、全員に共通とした時間価値、簡略化した乗り継ぎ経路、転居や転職を扱わない設定がある。政策の制度的な実施可能性も評価対象ではない。編集上の注意点として、自転車の選ばれやすさを手段固有の定数でも調整しているため、得られた利用割合をそのまま他都市の予測値として扱うべきではない。
現場への応用案
編集上の提案として、結果を停留所への近さを軸に紹介すると分かりやすい。停留所に歩いて行きやすい条件では自転車単独とバスの競合が見られ、停留所が少ない条件では自転車でバスに乗り継ぐ人が増えた、と条件を添えて示す。
現場で確かめるには
編集上の導入時の検証案として、候補地区では停留所までの実際の経路と横断位置、駐輪場所、バスの混雑、運行間隔を調べる。バス専用レーンが折り返し地点まで連続するかも確認したい。導入後は車からの転換、バスと自転車の間の移行、乗り継ぎ利用を分けて観測し、論文で示された仕組みが現地でも働くか検討する。
解説は原文の要旨・本文の確認範囲に基づきます。AIで作成し、同じモデルで原文との照合を行っています。全記事の人手による校閲は完了していません。「現場への応用案」「現場で確かめるには」は編集上の検討案です。
