コロナ禍の歩行者天国は沿道店舗の売上を変えたか
Were COVID pedestrian streets good for business? Evidence from interviews and surveys from across the US
米国の臨時歩行者天国では店舗の評価が分かれ、自己申告の売上を近隣店舗と比べても、施策による売上への影響は確定できなかった。
この論文のポイント
- 米国の商業地における97件の臨時歩行者天国を整理し、沿道店舗と近隣道路の店舗を調べた。
- 沿道店舗の施策評価は「悪い」32%、「影響なし」34%、「良い」34%に分かれた。
- 自己申告の売上増減率を用いた比較では、歩行者天国による売上への影響を確定できなかった。
背景と課題
コロナ禍の米国では、屋外で距離を保ちながら食事や買い物ができる場所をつくり、中心市街地の商業を支えるため、商業道路を車両通行止めにする自治体が現れた。歩行者天国は飲食店に屋外席を設ける余地を与える一方、車で来る客や配送車のアクセスを変える。沿道店舗への影響は一様とは限らない。
本研究が扱うのは、運動や交流を主目的とする一時的な「オープンストリート」一般ではなく、商業地の店舗を支える目的で設けられた歩行者天国である。店舗が施策をどう受け止め、何を懸念したかを調べるとともに、近隣店舗と比べた売上の変化を検討した。
研究の方法
観測単位は、歩行者天国沿い、または比較用の道路沿いにある事業所である。研究者は既存の道路利用変更データから米国内の商業地における全面通行止めを抽出し、人口上位500都市も手作業で調べて、計97件の施策を把握した。報道から閉鎖区間の端点を読み取り、境界が曖昧な場合は複数の資料や地元店舗への確認を試みた。実施期間は自治体などに照会した。比較用には、車両通行が制限されず、歩行者天国からおおむね1~2キロ離れた商業道路を選んだ。都市全体の経済状況をある程度共有すると見込む「疑似対照群」であり、無作為に割り付けた対照群ではない。道路の位置データとGoogle Placesの店舗位置を照合し、道路から40メートル以内の事業所を抽出した。
次に、地域、閉鎖期間、都市規模、冬の気候、業種を考慮して候補を選び、経営者や管理者ら38人に聞き取った。発言を11の主題に整理し、駐車、配送、客層、市の関与などの質問を作った。2021年10月に調査票を送り、598件の回答を得た。売上は、各都市で施策が実施されていた四半期を指定し、2019年の同じ四半期からの増減率を回答者に概算してもらった。この増減率が重回帰分析の目的変数である。説明変数は、店舗の前面道路が歩行者天国になったかを示す二値変数、飲食・娯楽業かどうか、回答者が経営者かどうか、立地の歩きやすさ、周辺人口密度、都市人口、商業道路の閉鎖への態度である。歩きやすさ、人口密度、都市人口、態度は標準化し、係数を各変数が1標準偏差違う場合の売上増減率の差として読めるようにした。さらに、歩行者天国と飲食・娯楽業の組み合わせを表す交互作用を入れた。出力は、これらの変数を考慮した売上増減率の差を表す係数、標準誤差などである。歩行者天国の係数は飲食・娯楽業以外での差を表し、同業種では交互作用の係数も合わせて読む。論文は回帰係数の詳しい推定手順を説明していない。
この研究の新しさ
道路閉鎖の位置と実施期間を広域で整理し、沿道店舗への聞き取り、アンケート、近隣道路との売上比較をつないだ点に特徴がある。店舗が施策をどう受け止めたかと、報告された売上がどう変化したかを併せて検討している。ただし、売上は会計記録ではなく回答者の概算である。
従来研究との違い
比較対象は、同じ地域にありながら車両通行が制限されなかった道路の店舗である。施策のあった店舗だけの売上変化を見る場合より、都市に共通するパンデミック期の変化を考慮しやすい。ただし、道路間の商業環境や客層まで一致したとは示されていない。回帰分析には店舗属性や立地の変数を加えたが、著者は都市・道路ごとの差をさらに扱う分析を今後の課題に挙げている。
結果と評価
アンケート回答は歩行者天国沿い291件、比較道路沿い307件で、回答率は約7%だった。沿道店舗に施策全体の影響を尋ねると、「悪い」32%、「影響なし」34%、「良い」34%に分かれた。一方、より恒久的または頻繁な実施には58%が賛成した。飲食店や娯楽施設は屋外空間を評価する傾向があり、小売店などからは駐車や日中の客足への懸念が出た。
自己申告の売上増減率の中央値は、2019年の同じ四半期比で沿道店舗がマイナス14%、比較道路の店舗がマイナス12.5%だった。回帰分析での歩行者天国の係数は、飲食・娯楽業以外についてプラス5.176パーセントポイント、標準誤差は5.903で、統計的に明確な差とはいえない。飲食・娯楽業との交互作用の係数はマイナス18.083だが、こちらも不確実性が大きい。聞き取りで同業種の評価が好意的だったことと、売上に関する係数の符号だけから、業種別の効果を断定することはできない。
限界・注意点
著者が述べる限界には、過去の四半期の売上を思い出して答えることによる測定誤差、Google Placesで把握できない廃業店舗の脱落、報道に基づく閉鎖区間の位置誤差、パンデミックに伴う交絡がある。調査の回答率も約7%にとどまる。売上と歩行者天国への態度の関連についても、態度が売上の申告を左右したのか、売上が態度を左右したのか判別できない。
編集上の追加検証事項は、会計データで自己申告を照合し、都市・道路ごとの差や廃業店舗を含めて調べ直すことである。本研究の比較から施策の因果効果は確定できず、結果を恒久的な歩行者天国やパンデミック後の売上にそのまま当てはめることもできない。
現場への応用案
編集上の提案として、歩行者天国の成否を売上の平均値だけで語らず、業種と時間帯に分けて伝える。飲食店の屋外席、小売店の店先の見え方、健康関連店舗への行きやすさを別々に示せば、同じ道路上で評価が割れた理由を説明しやすい。これは論文を読み解くための構成案であり、新たな実測結果ではない。
現場で確かめるには
編集上の導入時の検証案として、閉鎖前に店舗、配送業者、移動に制約のある利用客から、必要な駐車位置や搬入時間を聞き取る。試行中は曜日・時間帯ごとの歩行者数、店舗別の客数と会計上の売上を、近隣の比較道路でも継続して記録する。季節や市全体の変化も併記し、駐車場の案内や閉鎖時間を調整した後も同じ指標を追えば、変更に伴う店舗の負担や便益を検討しやすい。
解説は原文の要旨・本文の確認範囲に基づきます。AIで作成し、同じモデルで原文との照合を行っています。全記事の人手による校閲は完了していません。「現場への応用案」「現場で確かめるには」は編集上の検討案です。
