リヨンの大学では自転車だけで通う人と乗り継ぐ人の何が違うのか
Bicycle use in the university community: Empirical analysis using MobiCampus-UdL data (Lyon, France)
リヨンの大学関係者への調査から、自転車だけで通う場合と他の交通手段と組み合わせる場合では、関連する条件が異なることを示した研究です。
この論文のポイント
- リヨンの大学関係者の調査で、通学・通勤に自転車を使う割合は学生約11%、職員15.5%で、単独利用が多数を占めた。
- キャンパス近くのシェアサイクル拠点は自転車の単独利用と正に関連したが、他の交通手段との併用には有意な関連が確認されなかった。
- 居住地区、自転車の所有、シェアサイクル会員資格、公共交通の定期券と自転車利用との関連は、単独利用か併用かによって異なった。
背景と課題
自転車通勤・通学を増やす施策を考えるには、全行程を自転車で移動する人と、鉄道などへの乗り継ぎに自転車を使う人を区別する必要がある。後者も「自転車利用」に含めると、公共交通とのつながりや必要な設備を捉えやすくなる。
本研究はフランス・リヨンの大学コミュニティを対象に、学生と職員の普段の通学・通勤を調べた。自転車の単独利用と他の手段との併用が、居住地、利用できる車両、交通拠点への近さなどとどう関連するかを検討する。
研究の方法
観測単位は回答者1人で、対象は自宅からキャンパスへの普段の移動である。2017~2019年に参加17機関で実施したウェブ調査には、学生9325人、職員3670人が回答した。普段使う交通手段と、複数手段を使う場合の利用順序を尋ね、併用時の徒歩は5分を超える場合だけ独立した手段として数えた。学生と職員を分け、自転車だけを使うか、自転車を他の手段と併用するかを、それぞれ該当1・非該当0の目的変数にする。単独利用者は併用の分析では0、併用者は単独利用の分析では0に入る。
説明変数には年齢や性別などの属性、居住地区、自宅とキャンパスの距離、自転車の所有、シェアサイクル会員資格、公共交通の定期券、普段の到着・出発時刻などを用いる。地図上で回答された自宅と主な活動場所に交通網の情報を合わせ、拠点への近さも0・1に変換する。例えばシェアサイクル拠点は300メートル未満、鉄道駅は1キロメートル未満を近いとした。まず参加機関の構成を反映する重みで利用割合を集計する。次に学生・職員の各集団で、単独利用と併用を別々にロジスティック回帰で分析する。
回帰では、各人の説明変数に係数を掛けて足した値から、該当する確率を計算する。係数が正なら、他の投入変数が同じ条件で該当するオッズ、つまり「該当する確率と該当しない確率の比」が高い。単独利用では、観測された1と0の組み合わせが生じる確率を最大にする係数を求める。併用は少数例のため、その確率の対数に、係数をデータがどれほど精密に定めるかを表す情報行列の行列式の対数の半分を加えて最大化するFirth補正を使う。論文はこの目的関数を示すが、反復計算の手順は示していない。出力された係数と統計的有意性に加え、確率の差として読める平均限界効果で関連の大きさを比較する。回帰に用いた人数は学生6124人、職員2501人である。
この研究の新しさ
著者らが挙げる特徴は、フランスの大学関係者について、自転車を使う通学・通勤を単独利用と併用に分けて定量分析した点である。私有自転車とシェアサイクルの利用も区別し、複数手段を使う人については移動中の順序を確認した。さらに、公共交通やシェアサイクルへの近さをキャンパス側だけでなく自宅側でも測り、出発地と目的地の条件を分析に含めた。
従来研究との違い
記述集計では、通学・通勤のどこかで自転車を使う割合は学生で約11%、職員で15.5%だった。自転車だけを使う割合はそれぞれ9.0%、12.4%で、併用より多い。学生では公共交通だけの利用が35.6%、徒歩だけが22.8%で、自転車単独は4番目だった。職員では自家用車を運転する単独利用が35.7%で最も多く、自転車単独は3番目だった。
回帰分析では、キャンパスから300メートル未満にシェアサイクル拠点がある場合、自転車単独利用の推定確率は他の投入変数を考慮して学生で7.4パーセントポイント、職員で5.4パーセントポイント高かった。一方、併用との統計的に有意な関連は確認されなかった。自宅やキャンパスの公共交通停留所への近さについても、両集団の単独利用・併用との有意な関連は確認されなかった。
結果と評価
職員がリヨン都市圏外に住む場合、市中心部に住む職員より自転車単独利用の推定確率が12.7パーセントポイント低かった。一方、居住地区と併用との有意な関連は確認されなかった。自転車の所有とシェアサイクル会員資格はいずれも利用と正に関連し、特に所有と単独利用の関連が大きい。公共交通の定期券は学生・職員とも単独利用と負に関連するが、職員では併用と正に関連する。単独利用と併用を分けることで、こうした違いが見える。ただし、推定値は観測された属性を考慮した関連であり、拠点の設置や会員資格の取得による因果効果ではない。
限界・注意点
本文から確認できる対象範囲は、調査に参加した17機関の回答者で、回答率は全体で約13%である。併用の少数例について著者らは通常の推定に偏りが生じうると述べ、Firth補正を用いた。ただし、この補正から回答者の代表性や未観測の要因まで保証されるわけではない。リヨンの全住民や他都市へ結果をそのまま当てはめることはできない。
編集上の検証事項として、施設や会員資格を得る前から自転車を使いやすかった人が選ばれている可能性を確認したい。本研究の回帰は施策導入の因果効果を識別する設計ではない。本文によればデータは一般公開されておらず、合理的な依頼があれば著者から入手できるとされる。
現場への応用案
編集上の応用案として、キャンパスの自転車施策を紹介する際は、全行程を自転車で走る利用と、鉄道・公共交通につなぐ利用を分けて示す。私有自転車とシェアサイクルが移動のどの区間で使われるかを図解すれば、全体の利用割合だけでは分からない違いを伝えられる。これは記事構成の提案であり、論文の追加分析結果ではない。
現場で確かめるには
編集上の導入時の検証案として、自転車貸出や駐輪設備を導入するキャンパスでは、導入前後に同じ定義で単独利用と併用の割合を測り、私有自転車とシェアサイクルも分けて記録する。居住地や移動距離の違いを確認し、可能なら導入しない類似キャンパスとも比較する。交通サービスの同時期の変更や、利用者が自ら施策を選ぶ影響も調べる必要がある。
解説は原文の要旨・本文の確認範囲に基づきます。AIで作成し、同じモデルで原文との照合を行っています。全記事の人手による校閲は完了していません。「現場への応用案」「現場で確かめるには」は編集上の検討案です。
