予約型交通の乗車記録で見る、女性・高齢者の移動と目的地までの距離
Analyzing gender and age differences in travel patterns and accessibility for demand response transit in small urban areas: A case study of Tennessee
米テネシー州モリスタウンの予約型公共交通について、実際の乗車記録から利用者別の移動傾向と長距離移動が集中する地域を調べた研究である。
この論文のポイント
- 自宅関連の2万1673件のDRT乗車では、女性が54.5%、65歳以上が36.8%を占めた。
- 65歳以上の乗車の67.4%は自宅と医療施設の間の移動で、最短距離帯の乗車も比較的多かった。
- ブロック別の乗車件数と対応する人口の相関は強くなく、高需要・長距離の地域は利用者集団や目的地によって異なった。
背景と課題
デマンドレスポンス交通(DRT)は、事前の予約に応じて運行する公共交通である。人口が分散する小都市では重要な移動手段だが、従来の研究は車両配置などの運行面や、路線バスのアクセス評価に重点を置いてきた。本研究は、一般住民が利用できるモリスタウンのDRTで、性別・年齢層によって移動目的や距離がどう異なるかを調べる。
論文は「アクセスのしやすさ」の指標に、実際に成立した乗車の距離を使う。目的地までの距離が長いほどアクセスが低いと扱い、乗車件数が多く平均距離も長い地域を「生活上重要な目的地へのアクセスが乏しい可能性のある地域」と位置付ける。予約の取りやすさや所要時間を直接測った指標ではない。
研究の方法
分析単位は1件の乗車と、出発地を含む国勢調査ブロックである。2019年7月から2020年6月までの予約記録には、出発地・到着地、出発時刻、乗車距離、利用者の年齢・性別がある。研究者は出発地をハンブレン郡と隣接するジェファーソン郡に絞り、外れ値を除き、住所と郵便番号を使って位置座標を修正した。性別が不明な記録や、年齢が空欄・負値の記録を除いた結果、2万2669件が残った。年齢、出発時刻、距離を区分し、出発地と到着地の土地利用から移動目的を付ける。医療は病院・薬局・診療所・透析施設、余暇は店舗・教会、サービスは行政機関・銀行を含む。自宅を起点または終点としない996件は件数が少ないため後続の分析から除き、自宅関連の2万1673件を対象とした。
最初に、性別・年齢層と移動目的、出発時間帯、距離帯をそれぞれ交差集計する。これは、例えば各年齢層の乗車のうち医療目的が占める割合を比べる処理である。ピアソンのカイ二乗検定で分布の関連を調べるが、出発時刻を含む他の条件を統計的に調整して属性の効果を推定する手順は示されていない。次に自宅から出発した乗車に限り、ブロックごとに全利用者・女性・65歳以上の件数を数える。この件数と2020年国勢調査による対応する人口との関連を、ブロック単位のピアソン相関係数で調べる。
空間分析では、各ブロックから出た該当する乗車の距離を合計し、その件数で割って平均距離を求める。利用者集団別の平均に加え、医療・余暇・サービスという目的地別の平均も求める。最後に、ブロックの乗車件数と平均距離を、それぞれ地域内のブロック間中央値と比べて4区分にする。件数と平均距離がともに中央値を超える「高需要・低アクセス」のブロックを、潜在的な要注意地域として地図に示す。この出力は現地で調べる場所を絞る材料となる。
この研究の新しさ
実際のDRT乗車記録を使い、利用者属性と土地利用から判定した移動目的を、出発地ごとの需要・平均距離と結び付けた点に特徴がある。国勢調査人口だけで需要を推し量らず、女性・高齢者の乗車や目的地の種類ごとに、需要が多く移動距離も長いブロックを探す枠組みを示した。移動目的は利用者への直接の質問ではなく、出発地・到着地の土地利用による分類である。
従来研究との違い
路線バスを扱う先行研究には、停留所への近さや一定の移動費用内で到達できる施設数をアクセス指標にしたものがある。本研究はDRTの成立した乗車から、実際の移動距離を用いた。論文では、モリスタウンの距離の分布は散在しており、先行研究が示す路線バスの中心部や停留所からの距離に沿った傾向とは異なると述べる。また、人口の多いブロックが必ずしもDRTの乗車件数も多いとは限らなかった。
結果と評価
自宅関連の2万1673件では、女性の乗車が54.5%、65歳以上の乗車が36.8%だった。女性の件数は多くの目的で男性を上回ったが、通勤では男性が3423件、女性が3162件、行政機関・銀行などへのサービス目的でも男性が114件、女性が109件だった。高齢者の乗車の67.4%は自宅と医療施設の間の移動で、最短距離帯に入る割合は31.4%だった。性別・年齢層と、目的・時間帯・距離帯との各交差集計は、いずれもカイ二乗検定でp値が0.001未満だった。これは分布の関連を示し、属性による因果効果を示すものではない。
ブロック単位の相関係数は、総乗車件数と総人口で0.282、女性の乗車件数と女性人口で0.239、高齢者の乗車件数と高齢者人口で0.386だった。いずれも正の相関だが、人口だけで需要を十分に把握できるほど強くはない。地図では「高需要・低アクセス」に分類される場所が女性と高齢者で異なり、目的地別では医療目的の該当ブロックが比較的多かった。これらは対象地域・期間における観測結果である。
限界・注意点
【著者が述べる限界】対象はモリスタウンの1事例で、他地域への一般化には制約がある。利用できた属性は年齢と性別に限られ、自宅を起点・終点としない移動は主要分析から除かれた。利用者固有の識別子がないため、同じ人の利用の変化は追えない。記録の大半は新型コロナ流行前のものである。
【解釈上の留意点】属性情報が欠けた記録などは除外されている。平均距離は成立した乗車から計算するため、移動を断念した人の状況は表さない。「高需要・低アクセス」は現地で確認すべき候補であり、その地域の施設や運行が不足していると確定した結果ではない。
現場への応用案
【編集上の応用案】同じ地域について、全利用者・女性・高齢者の地図と、医療・余暇・サービス目的の地図を切り替えて見せると、要注意地域が対象者や目的地によって変わることを伝えやすい。凡例には「アクセス=成立した乗車の平均距離」と明記し、距離の長さを予約困難や施設不足と同一視しない。
現場で確かめるには
【編集上の導入時の検証案】別地域で分類を使う際は、住所の位置精度、土地利用による目的分類、ブロックごとの乗車件数を確認する。集計期間や地域区分を変えたとき、中央値付近のブロックの分類が安定するかを調べる。長距離移動の理由は、施設の立地や利用者への聞き取りで確かめ、運行改善を検討するなら予約できなかった需要や待ち時間も別途把握したい。
解説は原文の要旨・本文の確認範囲に基づきます。AIで作成し、同じモデルで原文との照合を行っています。全記事の人手による校閲は完了していません。「現場への応用案」「現場で確かめるには」は編集上の検討案です。
