北スウェーデンの通勤圏は広げられるか――45分を超える移動と車依存
People's preferences for commuting in sparsely populated areas: The case of Sweden
北スウェーデンの就業者調査は、通勤圏を広げる政策が移動時間、交通手段、日々の生活上の制約に直面することを示している。
この論文のポイント
- 北スウェーデンの6自治体での郵送調査から、雇用者・自営業者1159人の回答を分析した。
- 仕事への移動距離は平均24kmで、女性は平均19km、男性は29kmだった。
- 仮定の仕事を受け入れる意向は、片道通勤時間が45分を超えると大きく下がった。
背景と課題
スウェーデンの地域政策では、転居せずに遠くの職場へ通えるようにし、地域をまたぐ労働力と仕事の結び付きを強めることが重視されている。しかし、通勤を延ばせば交通費や環境負荷だけでなく、育児などに使える時間にも影響しうる。本研究は、人口が比較的まばらな北部で、現在の通勤と、より長い通勤を受け入れる意向を調べた。ここでの「通勤」は、自治体境界を越える移動に限らず、すべての仕事への移動を指す。広い自治体内では、境界を越えなくても仕事への道のりが長くなりうるためだ。
研究の方法
観測の単位は、調査対象地域に住む就業者1人の回答である。著者らは2004年10月、北スウェーデンの6自治体に住む18~65歳から無作為に選んだ2500人へ質問票を郵送し、3週間後に督促した。回答率は59.4%。現在の仕事への移動と希望する時間を比較するため、失業者と学生を除き、雇用者・自営業者1159人に分析対象を絞った。ウメオの中心市街地は、都市内の公共交通と都市間・地域交通を混ぜて比較しないよう、対象から外している。質問票では年齢、学歴、職業、家族構成、配偶者の仕事のほか、通勤や公共交通の利用状況、交通手段への評価を尋ねた。現在の通勤距離・時間、希望する時間、受け入れられる最長時間が、現状と希望を比べる主な量になる。
著者らはまず、これらの回答を性別、子どもの有無、学歴、就業分野、交通手段などで比較した。次に、失業中に別の町で仕事を得る場合や、よりよい仕事を提示される場合を想定し、片道30分、45分、1時間、1時間半の通勤を受け入れる意向を調べた。車とバス・鉄道での意向は、1を「可能性が低い」、7を「高い」とする尺度で示される。車とバスの印象についても、速さや柔軟性などを7段階で評価した。集団間の通勤時間や意向の比較には、平均の違いを調べる分散分析を用いている。得られるのは回答者の属性や想定条件ごとの傾向と差であり、施策による通勤者数の増加予測ではない。本文には、複数の要因を同時に調整する推定式や、欠損回答の処理を含む集計の詳細は示されていない。したがって、どの属性の影響をどの程度切り分けたかまでは、この記述から再現できない。
この研究の新しさ
自治体をまたぐ通勤者数だけでは見落とす、広い自治体内の仕事への移動も扱った点が、この地域を調べるうえで重要である。さらに、実際の通勤距離や手段に加え、望む時間、許容できる時間、仮定の仕事を受ける意向を並べている。現在長く通っていることと、今後も長い通勤を望むことを同一視せず、家庭での予定や交通手段も視野に入れて通勤圏拡大を検討した。
従来研究との違い
調査地域の仕事への移動距離は平均24kmだが、半数は12km以下だった。女性の平均は19km、男性は29kmである。車で通勤する割合も女性63%、男性76%と異なり、論文に示された全国平均54%をいずれも上回る。一方、希望する通勤時間や許容できる最長時間には、男女で概して大きな違いはなかった。実際の距離の男女差を、希望時間の差だけで説明することはできない。著者らは、就業分野や家族状況といった条件との関連にも着目しているが、観察された差を一つの原因に帰すことはできない。
結果と評価
車・バス・鉄道で受け入れられる最長通勤時間はおおむね40~45分、徒歩・自転車では約20分だった。希望する時間は全般に15~20分で、車通勤者の実際の時間は平均約30分と希望より長い。別の町の仕事を受ける意向も、片道45分を超えると大きく下がった。ただし、45分は全員に共通する絶対的な上限ではない。現在30分超を通勤している人は、30分以下の人より、45分超かかる仕事を受け入れる意向が高かった。
公共交通を有利にする仮定の質問では、通勤費の税控除を公共交通に限る場合に35%、移動時間の全てを勤務時間に算入する場合に47%、雇用主が移動費を全額補償する場合に42%が、バスを主な手段として選んだ。これは制度変更後の実際の利用率ではない。質問には所要時間や費用の具体額が提示されておらず、著者らも、回答者が交通手段の使い勝手を十分考慮しなかった可能性を指摘している。
限界・注意点
著者らは、希望時間と実際の時間の差には、現状への不満だけでなく、住宅や仕事を優先した結果が表れている可能性を挙げる。また、公共交通への金銭的な誘因も、速さや柔軟性が車に及ばなければ有効とは限らないと述べる。編集上の留意点として、本研究は一地域・一時点の就業者への質問票調査であり、家族構成や職業と通勤距離との関連から因果関係は確定できない。政策による労働市場の拡大や費用対効果、環境負荷を実測した研究でもない。
現場への応用案
編集上の提案として、「地図上で行ける職場が増えれば、就業機会も広がる」という説明を点検する題材にできる。職場までの距離だけでなく、片道時間、保育など時刻の決まった予定、車を使えるかを並べて示す。同じ距離でも、日々通える条件は人によって異なると伝えられる。
現場で確かめるには
編集上の導入時の検証案として、地域交通や通勤支援を検討するなら、候補となる居住地・職場間の片道時間、便数と乗り継ぎ、始業・終業時刻との適合、費用を車と公共交通で確かめたい。子どものいる世帯などを含めて利用意向を尋ねたうえで、導入後の実際の利用や就業の変化を別に追う。調査で見られた45分という目安を、他地域へそのまま当てはめないことも重要だ。
解説は原文の要旨・本文の確認範囲に基づきます。AIで作成し、同じモデルで原文との照合を行っています。全記事の人手による校閲は完了していません。「現場への応用案」「現場で確かめるには」は編集上の検討案です。
