シドニー中心部の歩行者数はどこで減り、どこで回復したか
Association between land use features and changes in walking patterns from pre-pandemic to post-pandemic: A case study of city of Sydney (2013–2023)
シドニー中心部の歩行者計測データでは、流行期の減少とその後の回復の大きさが地点によって異なり、周辺の土地利用などと関連していた。
この論文のポイント
- シドニー中心部の115地点で、2018年を除く2013~2023年の時間別歩行者数を分析した。
- 流行中の平均日歩行者数は、流行前の2013~2019年平均より平日41%、週末47%少なかった。
- POI数、人口、商業用地割合、交差点数が大きい地点ほど、流行期の減少とその後の増加が大きい方向の関連を示した。
背景と課題
感染症流行期には移動制限や在宅勤務が広がった。都市全体の歩行者数が減ったとしても、その平均だけでは、どの地点で減少が大きく、どの時間帯の人出が戻ったかは分からない。本研究はシドニー中心部の歩行者計測地点を対象に、流行前・流行中・流行後の時間帯別の形と人数の変化を調べ、周辺の土地利用や人口との関連を検討した。計測値は地点を通過した人数であり、個人の移動経路や歩行目的を記録したものではない。
研究の方法
観測の単位は歩行者計測地点である。2018年を除く2013~2023年の115地点について、毎年3月と10月に、午前6時から午後11時までの時間別通過人数を用いた。まず全期間の時間帯別・平均日人数を平日と週末に分けて比較する。回帰分析では各期を2年にそろえ、流行前を2017・2019年、流行中を2020・2021年、流行後を2022・2023年とした。地点ごとの平均日人数について、流行前から流行中への変化と、流行中から流行後への変化をそれぞれ目的変数とする。説明変数には、地点の周囲300メートルの商業・住宅・教育などの土地利用割合、人口、平均個人週収、POI(店舗や施設などの関心地点)の数、交差点数、道路のリンク数を交差点などのノード数で割った比などを使う。土地利用、人口、所得は主に2021年の国勢調査、POIと道路網はOpenStreetMapに基づく。
時間帯別の形を調べる際は、3時期と平日・週末の計6区分を作る。各地点の時間別人数を最大値と最小値に基づいて尺度変換し、高速フーリエ変換を使って系列を平滑化する。次に主成分分析で系列の情報を少数の指標にまとめ、k平均法で形の似た地点を群に分ける。群数は2~10群についてシルエット幅を調べて検討した。ただし、平滑化の具体的な設定や採用した主成分数は本文に示されない。人数の変化と地域特性の関連には、まずLASSO回帰で係数を縮めながら変数を選び、VIF(分散拡大係数)で説明変数同士の重なりを点検する。その後、変数の組を変えて線形回帰と負の二項回帰を推定する。線形回帰の係数は、他の投入変数を一定としたとき、説明変数の増加が人数の変化量の増減のどちらと結び付くかを表す。さらに、抽出し直したデータから複数の決定木を作るランダムフォレストで、各変数による予測時のばらつきの減少を重要度として測る。出力される地点群、回帰係数、重要度を二つの変化期間で比べる。負の二項回帰に、負にもなりうる人数の差をどう入力したかは本文に記載がない。
この研究の新しさ
時間別の計測を使い、人数の増減に加えて、朝・昼・午後に現れるピークの組み合わせを地点別に比較した点が特徴である。また、流行期の減少と流行後の回復を別の変化として扱い、同じ地域特性との関連を調べている。分類では、朝のみ、昼のみ、午後のみなどを含む7種類のピークの形を報告した。
従来研究との違い
流行前から流行中への変化では、POI数、人口、商業用地割合、交差点数が大きい地点ほど、人数が減る方向の関連が報告された。流行中から流行後には、これらの特徴が大きい地点ほど増加量も大きい方向だった。ただし、係数の統計的有意性は変数の組や回帰手法で変わる。例えば流行前から流行中の線形回帰では、商業用地割合はモデル2で有意だが、変数を増やしたモデル3では有意でない。住宅・教育用地割合や所得も、主要な変数と同程度に一貫した結果とは読めない。道路網の指標は一部の係数で有意でも、著者は追加によるモデル全体の改善を限定的と評価している。
結果と評価
流行中の2020~2021年の平均日歩行者数は、流行前の2013~2019年平均と比べ、平日41%、週末47%少なかった。これは回帰分析に使った流行前の2年間とは異なる比較期間である。平日の平均日人数は2020年から2023年に27%増えた一方、2023年も2019年の最高値より11%少なかった。回帰モデルは二乗平均平方根誤差、対数尤度、AICなどで比較し、著者は負の二項回帰を高く評価する。ただし、未使用の地点や期間で予測を確かめた手順は本文に示されない。また、人数の差を負の二項回帰でどう扱ったか不明なため、そのモデルの係数や優劣は慎重に読む必要がある。
限界・注意点
著者が挙げる限界は、歩行目的の情報がないこと、全地点を全期間で一貫して計測していないこと、2018年のデータがないことである。本文は天候や休日の影響も直接評価できないと述べる。解釈上は、主に2021年の地域特性を各期の説明に使っており、地域特性そのものの経年変化は扱っていない点にも注意が要る。さらに、負の二項回帰に渡した変化量の符号や変換手順が分からない。観察された関連だけから、土地利用や施設数が歩行者数の変化を引き起こしたとは言えない。
現場への応用案
【編集上の応用案】回復を伝える記事では、都市全体の人数の推移と、地点ごとのピーク時間帯の変化を並べて示す。商業地で減少も回復も大きかったという結果は、流行前の人数に戻ったことを意味しないと明記できる。
現場で確かめるには
【編集上の導入時の検証案】歩行者施策の候補地を選ぶ際は、同じ地点・曜日・計測時間で各期の人数を再比較し、計測が欠けた地点による影響を確かめる。2021年の土地利用や人口が他の年をどこまで代表するかを点検し、平日と週末でも結果を分けて確認する。施設整備の効果を判断するなら、整備前後の追加計測と比較対象地点が必要である。
解説は原文の要旨・本文の確認範囲に基づきます。AIで作成し、同じモデルで原文との照合を行っています。全記事の人手による校閲は完了していません。「現場への応用案」「現場で確かめるには」は編集上の検討案です。
