本文へ移動
交通と土地利用

地域外への通勤も含め、市町村別の集計値から仮想通勤網をつくる

Generating French virtual commuting networks at the municipality level

Maxime Lenormand / Sylvie Huet / Floriana Gargiulo
Journal of Transport and Land Use

原文PDFを読む ↗論文の公開ページ ↗

フランスの市町村別通勤集計から一人ずつ職場を割り当て、地域境界と距離の扱いが通勤網の再現性にどう影響するかを調べた研究です。

この論文のポイント

  • 市町村別の流出・流入通勤者数と直線距離を使い、通勤者一人ずつに職場を確率的に割り当てる。
  • 23地域の比較では、地域外の市町村を職場候補に加えても、地域内通勤網の再現指標に大きな違いは見られなかった。
  • 34地域の比較では指数型の距離抵抗がべき乗型より高い一致度を示し、共通のβを使った場合の一致度への影響も小さかった。

背景と課題

農村の市町村間では、一組の市町村を行き来する通勤者が少ない。そのため、各市町村から出る人数と各市町村へ入る人数だけでは、誰がどこへ通うかを特定できない。論文によると、フランスで市町村の組み合わせごとの通勤者数を示す起点・終点(OD)データを利用できるのは1999年で、ほかの年には主に市町村別の集計値に頼る。住民を個人単位で扱うシミュレーションには、集計値と整合する仮想的な通勤網が必要だった。

対象地域の住民が地域外で働くことも課題となる。地域内だけを職場候補にすれば、その人たちの行き先を地域内へ誤って割り当てかねない。著者らは既存の確率的な職場割当モデルを基に、地域外を含める方法、距離による選ばれにくさの表し方、詳細なODデータがない場合のパラメータ設定を検討した。

研究の方法

割当の単位は、対象地域のある市町村に住み、別の市町村へ通う人、一人である。居住市町村をi、職場候補をjとし、入力にはiから他市町村へ出る通勤者数O_i、地域内外の候補jへ他市町村から入る通勤者数I_j、市町村間の直線距離d_ijを使う。距離は市町村のランベール座標から計算する。地域外の候補には、検証した事例で対象地域に隣接する県の市町村を加えた。同じ市町村に住み働く人は、生成するOD表では対象外とする。1999年の詳細なODデータは、生成時の入力ではなく、調整と評価に使う。

まず、まだ職場を割り当てていない通勤者がいる地域内の居住市町村を一つ選ぶ。次に、その市町村の通勤者一人について職場を抽選する。候補jの重みは、残る受入人数I_jに「距離抵抗関数」を掛けたものだ。距離抵抗関数とは、遠い候補ほど選ばれにくくする係数である。各候補の重みを全候補の重みの合計で割り、抽選確率にする。論文は距離d_ijのマイナスβ乗を用いるべき乗型と、eのマイナスβd_ij乗を用いる指数型を比較する。βが大きいほど、受入人数に対して距離の影響が強くなる。割当ごとに該当するODの人数を1人増やし、iの未割当人数とjの残る受入人数を1人ずつ減らす。この処理を、対象地域から出る通勤者全員に職場が決まるまで繰り返す。

出力は、地域内の居住市町村から地域内外の候補市町村へ向かう人数である。地域外の行き先を合算すれば地域外への流出が分かる。地域内の職場では、入力した流入総数から地域内居住者への割当数を差し引き、地域外からの流入人数を求める。こうして地域外を一つの区分にまとめたOD表も作れる。ただし、論文は同一市町村間の値をゼロとする一方、掲載された抽選確率の式には同一市町村を候補から除く条件が明記されていない。この実装手順は本文だけでは確定できない。

この研究の新しさ

工夫の中心は、地域内で完結する通勤者数を先に切り出す代わりに、地域外の市町村も職場候補に加えたことにある。地域外へ通う住民の居住地・就業先の組み合わせが分からなくても、市町村別の流出・流入総数から割当を進められる。また、先行モデルのべき乗型だけでなく指数型の距離抵抗を試し、観測された通勤網との一致度で比較した。

従来研究との違い

地域境界の扱いはフランスの23地域で比較した。地域外を候補に含めない方法には地域内通勤に限った流出・流入人数が必要だが、地域外を含める方法には市町村別の総数を使える。両方法の出力から地域内同士の通勤を取り出して比べると、再現指標に大きな違いは見られなかった。地域外を加えるだけで一致度が上がった、という結果ではない。

距離抵抗の形は、地域外を含むモデルで34地域について比較した。観測ODとの一致度は全地域で指数型の方が高かった。各地域で調整したβを使う場合と、34地域の調整値の平均である1.94×10⁻⁴を共通に使う場合も比較し、一致度への影響は小さいと報告した。この値は、用いた距離の定義と検証対象の地域について得られたものである。

結果と評価

評価には1999年の観測ODデータを使い、確率的な生成を各条件で10回繰り返した。主な指標「共通通勤者割合(CPC)」では、各ODの生成人数と観測人数の小さい方を足し合わせ、生成・観測それぞれの総通勤者数の合計で割って2倍する。0は共通する通勤流がない状態、1は二つのOD表が同一の状態を表す。βはCPCを最大化して選んだ値ではない。生成と観測の通勤距離分布の差を測るコルモゴロフ–スミルノフ距離が最小になるよう調整し、10回の生成による調整値を平均した。

3地域の市町村別分析では、流出通勤者が多い市町村ほどCPCが高い傾向があった。一方、通勤者数のごく少ない流れは再現しにくい。著者らは、こうした流れが対象3地域の流出通勤者全体に占める割合を、それぞれ約4%、1%、5%と記している。流出者数とCPCの関係は観測された傾向であり、因果関係を示すものではない。

限界・注意点

著者らが挙げる限界は、非常に小さい通勤流を再現しにくいことと、共通のβを行政地域の異なる他国では検証していないことである。また、用いるのは直線距離なので、道路網の変化が移動時間を短縮しても距離には表れない。βを時期をまたいで一定とみなすのは仮定であり、本論文の比較は将来年の精度を保証しない。

編集上の検証事項は、同一市町村への割当をゼロとする条件と掲載された抽選式との実装上の整合、地域外候補をどこまで広げれば結果が安定するかである。CPCが高くても、個々人の実際の職場を特定できたわけではない。

現場への応用案

編集上の応用案として、地域内だけを描いた仮想通勤図と、地域外の職場候補を含めた図を対にして示せる。候補範囲を変えると行き先の割当がどう変わるかを説明できる。ただし、生成した線を実際に観測された通勤経路として表示しない。

現場で確かめるには

編集上の導入時の検証案として、適用先で詳細なODデータが得られる年を選び、市町村別集計を入力、ODデータを評価用に分ける。地域外候補の範囲を変え、地域内ODのCPC、通勤距離分布、地域外への流出人数を確認する。全域の平均だけでなく、境界付近や流出者の少ない市町村を点検し、共通βと地域別に調整したβの結果も比べたい。

解説は原文の要旨・本文の確認範囲に基づきます。AIで作成し、同じモデルで原文との照合を行っています。全記事の人手による校閲は完了していません。「現場への応用案」「現場で確かめるには」は編集上の検討案です。

← 解説の一覧へ原文PDFを読む ↗