徒歩で行ける目的地をどう測るか:機会の逓減を組み込んだWalkTHERE
Incorporating diminishing returns to opportunities in access: Development of an open-source walkability index based on multi-activity accessibility
この論文は、実際に歩く頻度と徒歩で用事を済ませられる可能性を区別し、後者を0〜100点で表す指標を提案する。
この論文のポイント
- 実際に歩く頻度と徒歩で目的地へ到達できる可能性を区別し、後者を測る指標を提案した。
- 道路距離による寄与の減衰と、同種の目的地が増える効果の逓減を組み合わせ、0〜100点で示した。
- 10都市に適用し、シドニーでは総合点と徒歩通勤割合の相関が0.39だった。
背景と課題
著者らは「歩きやすさ」を、望む目的地へ徒歩で到達しやすいことと定義する。実際に歩くかどうかには、他の交通手段の便利さや個人の事情も関わるため、歩行回数だけでは徒歩で得られる機会を表せない、という立場である。
従来の指標には、人口密度や土地利用の混在を到達可能性の代わりに使うもの、一定距離内の施設だけを数えるもの、地域内の相対順位で示すものがある。著者らは、目的地までの距離の違いを連続的に扱い、対象都市を変えても同じ尺度で読める指標を目指した。
研究の方法
計算の単位は出発地点ごとで、実例では居住地からの徒歩アクセスを扱う。目的地は雇用、教育、買い物、用事、余暇の5分類とし、分類ごとの重みにはシドニーの世帯交通調査における外出目的別の回数を使う。施設位置はOpenStreetMapから取得し、各施設の魅力度を原則1、雇用先の魅力度を職の数とする。雇用数と居住人口には国勢調査を用いる。オーストラリアでは、広い就業先集計区域の職を、就業先があり得る土地利用を持つ小区域へ面積に応じて配分し、その中心点に置く。歩行可能な道路網を用意し、出発地点から各目的地までの道路に沿った距離を求める。
次に、各目的地の寄与を距離が長いほど小さくする。実例の距離減衰は、道路距離に対して指数関数的に減り、係数は0.001である。同じ分類の目的地については、数が増すほど追加の機会がもたらす価値を小さくする。雇用では、出発地点から届く職の数を距離で重み付けして合計した量をAとし、その量から「1−exp(−λ₁A)」で0〜1の部分得点を得る。λ₁が大きいほど、少ない職数で得点が上限に近づく。シドニーの小区域ごとに、就業者数、徒歩のみの通勤者数、Aを用い、徒歩通勤者数を就業者数×λ₀×[1−exp(−λ₁A)]で表す関係を非線形最小二乗法で当てはめた。得られたλ₁は1.63×10⁻⁵、行動上の倍率λ₀は0.77である。徒歩アクセスの指標にはλ₀を使わず、十分な機会があれば部分得点が1に近づく形とする。分類別の得点を外出目的別の重みで合成し、地点別の総合点を0〜100で示す。計算量を抑えるため、対象は分類ごとに近い300地点、雇用は1200地点までとし、最大歩行距離も区切る。提示本文では一般の分類について追加の目的地の価値を計算する式が抽出時に崩れており、その厳密な更新順序や各分類の係数は確認できない。
この研究の新しさ
距離による到達しにくさと、同種の目的地が増える効果の逓減を組み合わせ、機会数に固定の上限を置かずに0〜100点へ収める点が中心である。仕事を含む複数の用事を扱い、分類、重み、道路網、距離減衰を変更できる公開コードとして実装した。100点は、移動費用ゼロで無数の目的地に届く極限を表し、現実の達成目標として置かれた値ではない。
従来研究との違い
一定距離内だけを数える方法と異なり、境界の内外で目的地の寄与が突然切り替わらない。また、標準化得点や順位と異なり、比較する都市の組み合わせが変わっても尺度は変わらない。シドニーでのWalkTHEREと既存のWalk Scoreの相関は、総合点で0.81だった。これは両者の値が似た動きをすることを示すが、どちらが徒歩アクセスを正確に測るかの証明にはならない。
結果と評価
オーストラリアの8都市と欧州の2都市に適用した。人口で重み付けした平均点はシドニー32.3、メルボルン31.4、エディンバラ47.2、パリ広域45.2で、論文の設定下では欧州の2都市が高い。シドニーでは、総合点と徒歩通勤割合の相関が0.39、雇用の部分得点との相関が0.59、余暇の部分得点との相関が0.165だった。目的別には余暇への徒歩アクセスが比較的高く、雇用へのアクセスは大半の住民で低い。これらは記述的な都市比較と相関の確認であり、得点を上げる施策が徒歩通勤を増やすという因果効果の検証ではない。
限界・注意点
著者らが挙げる限界には、大きな公園や商業施設を代表点に置くため入口までの距離を正確に表せないこと、OpenStreetMapの施設登録に欠落があり得ること、今回の結果に歩道や段差などの街路環境を反映していないことがある。細かな雇用位置も得にくく、広い区域の職を小区域へ推計配分している。雇用の逓減係数は徒歩通勤データから推定したが、著者らは通勤手段と徒歩アクセスの関係が単純でないことを認め、到達可能な職が非常に多い都市への外挿に注意を促している。
現場への応用案
編集上の提案として、都市の総合点に加え、雇用・買い物・余暇などの部分得点を並べて示すと、差を生む目的地の種類が伝わりやすい。高得点の場所が広がっていても、そこに住む人が少なければ多くの住民の状況を表さないため、地点別の地図と人口で重み付けした得点の分布を併記する。
現場で確かめるには
編集上の導入時の検証案として、対象地域の施設登録の欠落、雇用の小区域への配分、歩ける道路や施設の出入口の表現を現地資料と照合する。次に、外出目的別の重みや距離減衰係数を変え、地図と人口加重平均がどれほど動くか確かめる。住民にとっての妥当性を調べるなら、徒歩で用事を済ませられるという主観的評価など、徒歩通勤割合とは別の資料とも照合する。
解説は原文の要旨・本文の確認範囲に基づきます。AIで作成し、同じモデルで原文との照合を行っています。全記事の人手による校閲は完了していません。「現場への応用案」「現場で確かめるには」は編集上の検討案です。
