北京の乗り捨て型シェア自転車は、徒歩や公共交通の代わりになるか
Dockless bike-sharing’s impact on mode substitution and influential factors: Evidence from Beijing, China
北京の利用者調査では、乗り捨て型シェア自転車がなければ徒歩か公共交通を使うという回答が多く、代替候補に関連する要因は移動目的によって異なった。
この論文のポイント
- 北京の乗り捨て型シェア自転車利用者489人を対象に、四つの移動目的別の回答を分析した。
- 主な代替候補は徒歩と公共交通で、自家用車を挙げる割合は移動目的によって異なった。
- 交通手段への態度や自宅周辺の自転車道の長さなどは代替候補と関連したが、因果的な転換は実証していない。
背景と課題
乗り捨て型シェア自転車は、専用の返却拠点に縛られず、駐輪が認められた場所などで利用を終えられる。都市交通への影響を考えるには、自動車利用を減らす可能性だけでなく、徒歩や公共交通の移動を置き換える可能性も確かめる必要がある。本研究の「代替」は、現在シェア自転車で行う移動について、利用者が「シェア自転車がなければ使う」と答えた手段を指す。導入前後の行動変化を直接測ったものではない。
著者らは北京で、通勤・通学、スポーツと余暇、食料品の買い物、買い物や飲食などの娯楽目的の外出を分けて調べた。個人の属性や交通手段への態度、自宅周辺の交通環境が、代替候補とどう関連するかも検討した。
研究の方法
分析単位は、乗り捨て型シェア自転車の利用者が、利用する移動目的ごとに答えた代替手段である。北京在住者へのオンライン調査で得た有効回答606件から、利用者489人を対象にした。「シェア自転車が存在しなければ、その移動に何を使うか」という回答を、徒歩、私有の自転車・電動自転車、公共交通、自家用車・タクシー・オートバイなどの動力車両にまとめた。「移動しない」は件数が少なく、手段の代替ではないため、記述的な集計にとどめて回帰分析から除いた。
説明変数には年齢、所得、健康状態、車両保有、周囲の人の利用や支持などを用いた。交通手段への態度は、31項目の5段階回答を主成分分析と回転で八つの因子に整理し、因子得点を算出した。例えば「自動車を好む態度」は複数の回答をまとめた得点である。申告された自宅から半径600メートルを居住地区とし、その中のバス停・地下鉄駅の数、自転車道・歩行者優先道路の総延長を地理データから求めた。居住地区への満足度も加えた。
次に、移動目的ごとに多項ロジットモデルを一つずつ推定した。多項ロジットは、順序のない複数の選択肢と説明変数の関係を調べる統計手法である。各モデルでは徒歩を基準とし、ほかの三つの代替候補を挙げるオッズ、すなわちその候補の確率を徒歩の確率で割った値を比較した。出力のオッズ比が1を超える場合、ほかの説明変数をモデルに含めた条件で、その候補の徒歩に対する相対オッズが高い方向の関連を示す。例えば自転車道延長のオッズ比は、延長が1キロメートル違う場合の相対オッズの比であり、回答確率そのものの増加率ではない。最後に目的別の回答割合、オッズ比、切片だけのモデルとの比較を読み、代替候補と関連要因を調べた。移動距離など測れていない条件もあるため、係数は因果効果とは解釈しない。
この研究の新しさ
本研究の特徴は、乗り捨て型シェア自転車が代替しうる手段を四つの移動目的別に調べた点にある。車両保有や自宅周辺の交通施設に加え、自動車、徒歩、自転車、公共交通などへの態度も同じ分析に含めた。これにより、利用の有無だけでなく、利用者がどの手段の代わりとして使うと答えるかを検討している。
従来研究との違い
論文が紹介する拠点返却型シェア自転車の先行研究でも、徒歩や公共交通が主な代替候補で、自動車の代替には都市間の差があった。北京の回答傾向は、徒歩と公共交通が多い点でおおむね一致する。一方、先行研究の多くは移動目的をまとめるか通勤に絞っており、本研究は目的ごとに関連要因を比べた。拠点返却型と乗り捨て型を同じ条件で直接比較した研究ではない。
結果と評価
記述的な結果では、多くの回答者が徒歩または公共交通を代替候補に挙げた。公共交通を挙げた割合は通勤・通学で44.60%、娯楽目的で40.30%、スポーツと余暇で17.30%だった。自家用車を挙げた割合は食料品の買い物で14.80%、スポーツと余暇で4.30%と報告されている。これらは各目的について回答した利用者の割合であり、北京全体の交通量の減少率ではない。
四つの回帰モデルはいずれも、切片だけのモデルとの比較で有意だった。食料品の買い物では、自宅周辺の自転車道が1キロメートル長い場合、徒歩に対して公共交通を代替候補に挙げるオッズ比は1.324、動力車両では1.502だった。通勤・通学では、自動車を好む態度の得点が高いほど、徒歩に対して動力車両を挙げる相対オッズが高かった。いずれも観測された関連であり、自転車道の整備や態度の変化が代替を引き起こしたとは示していない。
限界・注意点
著者らが挙げる限界は、目的別の移動距離・時間がなく、人口密度や土地利用の混在度も評価できなかったこと、そして仮想的な代替手段の回答を実際の代替行動の代理としたことである。シェア自転車が使えなくなっても、利用者が以前の手段に戻るとは限らない。著者らは導入前後を追う調査や、選択肢の構造を別のモデルで検討することを今後の課題としている。さらに編集上の解釈では、オンライン調査に参加した北京の利用者の結果を、市民全体や他都市にそのまま広げない注意が必要である。
現場への応用案
編集上の提案として、シェア自転車の導入効果を伝える記事では、自動車からの転換だけでなく、徒歩、公共交通、私有自転車、動力車両のどれを代替すると利用者が考えるかを、移動目的別に示すとよい。公共交通機関までの移動に使う場合と、公共交通による移動そのものを置き換える場合も、確認できれば分けて説明したい。
現場で確かめるには
編集上の導入時の検証案として、導入前後に同じ地域の移動を記録し、距離、所要時間、目的、乗り継ぎの有無を確認する。自転車道や駐輪場所を整備する地区と比較地区を設けるなら、整備前からの交通量や利用者構成の違いも記録する。徒歩・公共交通からの転換と自動車利用の変化を別々に測ることで、本研究の仮想質問による見通しを実際の行動と照らせる。
解説は原文の要旨・本文の確認範囲に基づきます。AIで作成し、同じモデルで原文との照合を行っています。全記事の人手による校閲は完了していません。「現場への応用案」「現場で確かめるには」は編集上の検討案です。
