本文へ移動
交通と土地利用

郊外を「都市」と感じる人は車を使わない?居住地の認識と余暇の移動

Why people use their cars while the built environment imposes cycling

Veronique Van Acker / Ben Derudder / Frank Witlox
Journal of Transport and Land Use

原文PDFを読む ↗論文の公開ページ ↗

ベルギー・フランデレン地域の調査では、居住地の測定結果と本人の認識が食い違う場合の交通手段の傾向は、都市・郊外・農村で異なっていた。

この論文のポイント

  • 主観と客観の居住地類型を突き合わせた1,626人のうち、一致したのは616人、約38%だった。
  • 都市居住者の車利用は地域認識による違いが小さい一方、郊外では認識と余暇移動の交通手段との関係が目立った。
  • 標本は地域全体を代表せず、記述的な比較から因果関係は判断できない。

背景と課題

人口密度が高く、施設に行きやすい地域では、車の利用が少なく、公共交通や徒歩・自転車の利用が多い傾向がある。しかし、同じ場所でも「便利」「静かで緑が多い」といった受け止め方は人によって違う。本論文は、現在の居住地についての認識と、測定した地域特性から付けた分類が一致するかを調べ、その組合せと余暇移動の交通手段との関係を検討する。

先行研究が扱った「住みたい地域と実際に住む地域の食い違い」とは、問いが異なる。調査は2007年5〜10月にインターネットで行われ、2,363人が回答し、データ整理後に1,878人が分析用に残された。

研究の方法

観測の単位は回答者で、各人の居住地を主観と客観の両側から分類する。主観側は、現在の居住地について5段階で尋ねた満足度のうち、物理的な地域特性に結び付けられる7項目を使う。公共交通、店、余暇活動の場所、職場、家族・友人への近さと、静けさ、緑の存在である。これらは調査で重視すると答えた居住地の側面についての満足度であり、各施設までの実測距離ではない。客観側は住所を地図上の位置に対応させ、二つの指標を付ける。一つは「局所的な潜在的アクセシビリティ」で、近場への到達しやすさを表す。住所から道路網の車での最速経路を求め、5分以内に到達できる各国勢調査区の人口を、所要時間で重み付けして合計する。もう一つは国勢調査区に占める市街化された地表の割合で、建物等の集まり具合の代理指標とする。人口を時間に応じて重み付けする具体的な関数は本文に示されておらず、この部分の数値計算は再現できない。

次に、主観の7項目には主軸因子法による因子分析を使う。これは回答項目に共通する変動を少数の軸で表す方法で、本論文ではプロマックス回転を経て「施設へのアクセス」と「空間のゆとり・静けさ」の2軸を得る。各回答者の軸上の得点を計算し、ウォード法と平方ユークリッド距離によるクラスター分析で、得点が似た人を都市的・郊外的・農村的な認識の3群に分ける。同じ分類手法を客観側の二つの指標にも適用し、居住地を都市・郊外・農村の3類型にする。群数は群内平方和の変化と分類の解釈しやすさを踏まえて選び、標本を二分して分類をやり直す確認も行った。最後に各人の主観・客観の類型を突き合わせ、同じなら一致、異なれば不一致とし、その組合せごとに余暇移動の車、公共交通、徒歩・自転車の利用割合を比較する。交通手段の選択確率を推定する回帰式や、交絡要因を一括調整する手順は示されていない。

この研究の新しさ

本研究の特徴は、本人が希望する居住地ではなく、現に住む場所をどう認識しているかを、測定指標による居住地分類と対比した点にある。さらに、不一致を一種類としてまとめず、都市・郊外・農村のどこに住む人の不一致かを分けて交通手段との関係を見ている。ただし、ここでの「客観」は二つの指標に基づく類型であり、地域のあらゆる特徴についての正解を意味しない。

従来研究との違い

論文は、交通手段が本人の地域認識に近づくという見方と、実際の居住地の特徴に近づくという見方を対比する。都市居住者の車利用は、居住地をどう認識するかによる違いが小さく、客観的な都市類型に沿う傾向だった。一方、郊外では、都市と認識する人は都市と認識する都市居住者に、農村と認識する人は農村と認識する農村居住者に、車利用の傾向が近かった。公共交通と徒歩・自転車でも郊外では認識との関係が目立つが、都市を農村と捉える人などには単純に当てはまらない。すべての地域・交通手段を、片方の見方だけで説明できるという結果ではない。

結果と評価

主観と客観の分類を突き合わせた1,626人では、一致は616人、約38%だった。全体として、測定上の類型より都市的に捉える人が多い。例えば、客観的に農村と分類された814人のうち57.6%は、居住地を郊外と認識していた。余暇移動との関係は、とりわけ郊外居住者で目立った。ただし、本文の交通手段別比較は主に図による記述であり、ここから認識の因果効果や効果量を数値で断定できない。

分類は標本を二分して再分析する方法でも確認された。一方、群間差の分散分析について著者は、そもそも差が大きくなるように群を作った後の検定なので、記述的に扱うべきだと注意している。一致群と不一致群の属性比較で有意差が見つからなかったことも、交通手段との関係から交絡が除かれた証明にはならない。

限界・注意点

著者が挙げる最大の限界は標本の代表性である。高学歴の若年層、女性、フルタイム就業者などが多く、結果をフランデレン地域全体にそのまま広げられない。元の調査は本研究の問いに合わせて設計されたものではなく、認識の分類に影響しうる。客観的な地域類型も二指標だけに基づき、余暇施設の詳細な位置データがないため、到達しやすさには人口へのアクセスを代理指標として使っている。編集上の留意点として、観察データの比較から、認識を変えれば車利用が減る、あるいは高密度化すれば必ず徒歩・自転車が増えるとは言えない。

現場への応用案

【編集上の応用案】自転車施策を扱う記事では、施設の立地や地域密度だけでなく、住民が移動先への近さや周囲の静けさをどう感じているかも別に取材するとよい。特に郊外では、同じ客観的類型に住んでも認識が異なる人を取り上げることで、施策の受け止め方を掘り下げられる。ただし、本論文は自転車単独ではなく、徒歩と合わせた区分で利用傾向を示している。

現場で確かめるには

【編集上の導入時の検証案】施策への応用前に、対象地域を代表する標本で居住地の認識と実際の施設・交通条件をそれぞれ測り、地域類型別に交通手段との関係を再確認したい。余暇移動の徒歩と自転車を分け、移動先や車の保有なども記録すれば、元の比較だけでは区別しにくい要因を点検できる。これは論文が実施した追加実験ではない。

解説は原文の要旨・本文の確認範囲に基づきます。AIで作成し、同じモデルで原文との照合を行っています。全記事の人手による校閲は完了していません。「現場への応用案」「現場で確かめるには」は編集上の検討案です。

← 解説の一覧へ原文PDFを読む ↗