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交通と土地利用

リスボン地下鉄の駅への近さは財源になるか――不動産価値と課税3案の試算

The value capture potential of the Lisbon Subway

Luis Miguel Garrido Martínez / Jose Manuel Viegas
Journal of Transport and Land Use

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リスボン市の不動産価格に表れた地下鉄への近さの評価額を推計し、課税方法ごとの年収入と所有者負担を比べた研究である。

この論文のポイント

  • 市街区の統計から合成物件を作り、売出し価格に基づくモデルで地下鉄への近さに対応する不動産価値を推計した。
  • 比較表の推定年収入は、特別賦課が約1708万ユーロ、既存税への上乗せが約954万ユーロ、既存税収の振替が約409万ユーロである。
  • 振替案は所有者の追加納税を伴わない一方、市の既存税収を地下鉄へ移す制度上の調整を要する。

背景と課題

公共交通は運賃だけで運行・整備費を賄いにくい一方、駅への近さという利便性は不動産価格に反映され得る。「価値還元」とは、交通施設に関連して生じたと見込む不動産価値の一部を財源として回収する考え方である。本論文は、地下鉄が主に運行するリスボン市で、その財源規模と課税時の負担を試算する。ただし、価格に表れた駅への近さの評価と、地下鉄建設が実際にもたらした値上がりとは同じではない。

研究の方法

分析の単位は個々の住宅・非住宅物件で、元資料には市街区単位の国勢調査、事業所情報、2007年の不動産売出し情報を使う。売出し情報の完全な記録は住宅8742件、非住宅1165件。価格を説明する変数は、部屋数・面積・築年数などの建物属性、周辺の教育水準など、地下鉄・道路・近郊鉄道へのアクセスである。地下鉄へのアクセスは最寄りの路線と近い2路線までの徒歩距離から、距離が延びるほど小さくなる指標にする。周辺環境とアクセスは市街区の重心を基準に計算し、近隣価格を表す項には500メートルの範囲を用いる。

まず、先行する研究段階で推定した「空間ヘドニック価格モデル」を使う。これは物件属性と価格の統計的な関係を表すモデルで、説明される量は成約価格ではなく売出し価格の対数である。建物・周辺・アクセスの各変数に加え、近隣物件の対数価格を重み付けした「空間ラグ」を含む。係数は、ほかの項を一定とした場合の各属性とモデル上の価格との関係を示す。論文はモデル式と係数を示すが、係数の推定手順や、地下鉄に対応する評価額を物件ごとに切り出す計算の細部は示していない。したがって、その部分を別の推定法や反実仮想の式で補うことはできない。

次に、市街区の戸数と属性の統計分布に合わせ、乱数を使うモンテカルロ・シミュレーションで合成物件を生成する。住宅属性は面積以外を独立に生成し、面積は生成した部屋数に依存させる。非住宅にも同様の手順を用い、推定市場価格と地下鉄に対応する評価額を市全体へ集計する。この市場価格側の計算は100回繰り返す。別に現行の不動産税IMIについて、基準建築単価に換算面積、用途・立地・品質・築年数の係数を掛けて税評価額を求め、200回繰り返す。立地係数は地下鉄だけを表すものではない。最後に両側の集計結果を使い、特別賦課、既存税への上乗せ、既存税収の振替について、想定年収入と追加負担を比較する。

この研究の新しさ

市街区の集計統計から住宅・非住宅の物件群を作り、価格モデルによる地下鉄の評価を、税制度ごとの年収入と所有者負担につなげた点が特徴である。駅への近さと価格の関係を示すだけでなく、対象区域を絞る課税と既存の不動産税を利用する案を、同じリスボン市について検討している。

従来研究との違い

特別賦課は、市街区の市場価値に対する地下鉄の直接的な評価割合が少なくとも1%となる区域を対象とし、推定した地下鉄分の価値の3分の2を回収する設定である。年額の検討には、物価上昇率を超える不動産価格の伸びを年0.9%、物件の保有期間を20年とする仮定も置く。既存税への上乗せ案も地下鉄分の3分の2を対象とするが、現行税率を使う。振替案は、現行税に地下鉄の価値がすでに含まれるとみなし、所有者の納税額を増やさず税収の配分先を変える。3案は収入だけでなく、負担する人の範囲と増税の有無が異なる。

結果と評価

論文の比較表に示された推定年収入は、特別賦課が約1708万ユーロ、既存税への上乗せが約954万ユーロ、税収の振替が約409万ユーロである。論文はそれぞれを、2007年の地下鉄の年間運営赤字の約24%、14%、6%に相当すると比較する。比較表で影響を受ける所有者の割合は、特別賦課46.20%、上乗せ77.05%、振替0%。振替の0%は新たな納税負担がないという意味で、財源移転が不要という意味ではない。

現行税の試算では、2009年の実際の税率0.4%を適用した推定年収入が約9100万ユーロとなり、論文に記された同年の市の税収約8800万ユーロに近い。これは税額の概算を点検する材料だが、地下鉄への近さが価格や税収を因果的に増やしたことの検証ではない。各案の財源効果も、論文が置いた価格、税率、期間などの条件下で読む必要がある。

限界・注意点

著者が挙げる資料・モデル上の制約には、成約価格ではなく売出し価格を使うこと、携帯電話だけを使う事業所が資料から漏れ得ること、合成住宅の属性をほぼ独立に生成するため不自然な組み合わせが生じ得ることがある。増税に伴う企業の移転や交通・土地利用への影響も検討範囲外としている。また、税評価額の立地係数には公共交通以外の要素も含まれ、その評価額を地下鉄だけの価値とは読めない。

数値の読解にも注意が要る。地下鉄の評価総額は本文の記述と掲載表の内訳が整合せず、特別賦課による住宅の平均負担増加率も本文と比較表で異なる。ここでは一致しない総額や負担率を結論の根拠にせず、3案の年収入には比較表で確認できる値を用いた。

現場への応用案

【編集上の提案】「駅への近さに対応する推定価値」「毎年回収する額」「誰の負担が増えるか」を分けて図解したい。資産価値の推計額を、そのまま毎年使える税収と取り違えずに済む。振替案では、所有者の負担は増えなくても市の税収の配分が変わることを併記する。

現場で確かめるには

【編集上の検証案】導入前には、物件台帳と成約価格を用いて、合成物件の戸数・用途構成と価格推計を照合したい。駅までの実際の徒歩経路で対象区域を点検し、価格変動や税率を変えた場合の年収入も確かめる。負担が集中する地区では店舗・事務所の移転可能性を調べ、振替案では市から地下鉄運営主体へ財源を移す制度上の可否を確認する。

解説は原文の要旨・本文の確認範囲に基づきます。AIで作成し、同じモデルで原文との照合を行っています。全記事の人手による校閲は完了していません。「現場への応用案」「現場で確かめるには」は編集上の検討案です。

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