マドリードの環状道路は雇用への行きやすさと地区間格差をどう変えるか
Efficiency and equity of orbital motorways in Madrid
マドリードの道路網を比較した研究では、内側のM40は雇用への行きやすさの平均を大きく高め、外側のM50は地区間格差を縮めた。
この論文のポイント
- 1996年の雇用配置を固定した道路網の比較で、総雇用へのアクセシビリティの地区平均はM40追加で12.3%、M50追加で2.6%上がった。
- 総雇用への指標の変動係数は、M40追加で34.40から34.69へ上がり、M50追加で32.41へ下がった。
- M50追加による総雇用への指標の改善は、中心部の第1帯で0.1%、最も外側の第4帯で5.1%だった。
背景と課題
環状道路は、都心を経由せずに郊外の地区同士を結ぶ経路をつくる。ただし、道路がどこを通り、行き先となる職場がどこに集まっているかによって、その効果は変わりうる。論文が扱うアクセシビリティとは、ある場所から活動の機会へ到達しやすい度合いであり、実際の交通量を表すものではない。本研究はマドリードの環状道路M40とM50を対象に、雇用へのアクセシビリティの都市圏平均と、地区間のばらつきを調べた。
研究の方法
分析単位はマドリード都市圏の69地区で、マドリード市内の21地区と郊外の48自治体からなる。各地区の代表地点である重心点に、1996年の雇用数を対応付けた。雇用は総数に加え、工業、小売、サービス、公務に分ける。道路網は609地点と、それらを結ぶ1312区間で表し、区間ごとに長さ、車線数、速度、所要時間を持たせた。主要道路の速度には走行車両による公式観測値を使い、観測値のない街路などは道路種別と平均的な混雑を考慮して推定した。結果を場所別に読むため、69地区をM30の内側、M30とM40の間、M40とM50の間、M50の外側という四つの帯にも分けた。
計算では、M30のみを含む網、M30とM40を含む網、さらにM50を加えた網を用意する。中間のM40網だけが、道路網と雇用データの時点がそろう1996年の実際の状態である。他の二つは、そこからM40の区間を除く、またはM50の区間を加えた仮想条件とした。雇用配置を固定し、各条件の道路網で出発地点から69地区の重心点まで、所要時間が最短となる経路を求める。次に、出発地区iの指標を、各到着地区jの雇用数をiからjへの最短所要時間のx乗で割り、全到着地区について足した値として計算する。xは遠い職場の寄与をどれだけ小さくするかを決める値で、本研究では1に固定した。したがって雇用数が多い行き先ほど指標は大きく、所要時間が長いほどその行き先の寄与は小さい。この計算を総雇用と産業別の雇用で行い、地区別の値を得る。最後に地区の平均でアクセシビリティ上の効率を、変動係数とジニ係数で地区間の空間的公平性を評価した。両係数が小さいほど地区間のばらつきは小さい。論文は四つの帯ごとの平均を示し、地図も作成している。
この研究の新しさ
論文の着眼点は、環状道路の位置と雇用の分布を組み合わせて効果を比べたことにある。内側のM40と外側のM50を区別し、都心への集中が強い公務・サービスと、郊外にも比較的広く分布する工業などについて、同じ道路網の変化が異なる結果を生むか調べた。平均的な改善と地区間格差の双方を示すことで、環状道路の評価を一つの数値にまとめずに読めるようにした。
従来研究との違い
M30条件からM40条件への差をM40の寄与、M40条件からM50条件への差をM50の寄与として比較する。いずれも1996年の雇用配置を固定し、対象とする環状道路の区間を変えた比較である。そのため、道路網の変更に伴う計算上のアクセシビリティの差を示すが、建設前後に実際に生じた土地利用や交通需要の変化を合わせて測った結果ではない。
結果と評価
総雇用へのアクセシビリティの地区平均は、M40を加えると12.3%、さらにM50を加えると2.6%上がった。M40追加時はM40の両側に当たる第2・第3帯で改善が大きく、総雇用への指標は第3帯で19.6%増えた。M50追加時は外側の第4帯で5.1%増えた一方、中心部の第1帯では0.1%だった。M50追加による産業別の地区平均の改善は工業で4.02%、公務で1.93%である。
総雇用への指標の変動係数は、M30条件の34.40からM40条件では34.69へ上がり、M50条件では32.41へ下がった。この指標では、M40は地区間格差をわずかに広げ、M50は縮めた。ただしM40の方向は産業によって異なり、工業では格差が広がり、公務では縮んだ。これらは固定した雇用配置と設定した道路網の下でのアクセシビリティの変化であり、通勤実績や住民の所得の変化を示す値ではない。
限界・注意点
著者は雇用配置を1996年に固定し、環状道路の区間を変えたときのアクセス時間の効果に分析を絞っている。土地利用の変化や一時的な混雑緩和は対象外で、同時期に造られた他の道路区間も加えていない。また、提示された本文には、同じ地区内を行き来する場合の所要時間をどう設定したかの説明がない。編集上の検証事項としては、速度を固定する仮定が対象都市の混雑下でも妥当か、雇用が移った場合に結果がどう変わるかを確かめたい。論文の公平性は場所ごとの指標のばらつきであり、住民間の公平性を直接測ったものではない。
現場への応用案
編集上の応用案:環状道路の事業評価を伝える記事では、都市圏平均の改善率と、地区ごとの改善率を並べて示す。行き先も総雇用だけにまとめず、職場の種類ごとに示せば、どの地区がどの機会に近づくのかを読者が追いやすくなる。
現場で確かめるには
編集上の導入時の検証案:別の都市で同様に評価するなら、地区境界、雇用の時点と分類、道路区間の速度データを確認する。その上で道路を加える前後の最短所要時間と地区別指標を計算し、平均、変動係数、地区別の増減を照合する。現実の事業判断には、交通量と混雑の変化、建設費、環境影響、雇用の移転も別途調べる。
解説は原文の要旨・本文の確認範囲に基づきます。AIで作成し、同じモデルで原文との照合を行っています。全記事の人手による校閲は完了していません。「現場への応用案」「現場で確かめるには」は編集上の検討案です。
