写真やツイートで都市の遊歩道の通行量は測れるか――ミネアポリス80区間の検証
Photos, tweets, and trails: Are social media proxies for urban trail use?
位置情報付きの写真やツイートは、都市の遊歩道の通行量を推定する代替指標としては精度が足りなかった。
この論文のポイント
- 2013年のミネアポリス市内80区間で、位置情報付き写真・ツイートを赤外線計測に基づく通行量と比較した。
- 写真と通行量の対数回帰のR²は0.43だったが、写真から推定した通行量のMAPEは124%だった。
- Twitter指標と通行量の対数回帰のR²は、集計範囲に応じて約0.05~0.07だった。
背景と課題
自由に出入りできる都市の遊歩道では、利用者を継続して数えるために観測員や計測器が必要になる。位置情報付きのSNS投稿なら専用機器を設置せずに集められるため、利用状況を知る手掛かりとして期待される。行楽地では写真投稿を訪問需要の指標に用いた先行研究があるが、都市の遊歩道は通勤や買い物にも使われる。日常的な移動が投稿に表れるとは限らず、投稿数を通行量の代わりにできるかは、実際の計測結果との照合が必要だった。
研究の方法
観測単位は、米国ミネアポリス市内の遊歩道網を分けた、平均約1マイルの80区間。対象は2013年の1年間である。まず各区間の周囲に200フィートのバッファー(道から一定距離内を集計する範囲)を設け、位置情報付きのFlickr写真とTwitter投稿を抽出した。Twitterは50フィートの範囲でも集計したが、写真の50フィート集計は件数が少なく、分析結果を報告していない。写真の取得にはFlickrのAPIとInVEST Visitationモデル、ツイートの取得にはTwitter Public Stream APIを用いた。ここでの位置情報は、投稿者が遊歩道上にいたことまで保証しない。
次に、各区間に入った投稿を利用者と日付の組で数え直す。同じ人が同じ日に同一区間で写真を何枚撮っても、写真利用者日数(PUD)は1とする。ツイート利用者日数(TUD)も同じ考え方で、両者を2013年の1日当たり平均にしたものがAAPUDとAATUDである。照合先の年間平均日通行量(AADTT)は既報の赤外線計測に基づく推定値で、歩行者と自転車を区別しない。基礎となる計測では、通年観測の6地点と、4~10月に少なくとも7日間行った短期観測を使用した。赤外線センサーの同時通過による数え落としは、130時間の人手による計数と照合して作った式で時間別に補正した。短期観測の日々が年間交通量に占める割合を通年観測地点から求め、各区間の年平均へ換算している。この換算には両地点の交通パターンが似るという仮定がある。
最後に、区間別の投稿指標とAADTTを地図・記述統計で比べ、それぞれ対数に変換した単回帰で関連を調べた。対数同士の回帰は、投稿指標の割合による違いと通行量の割合による違いの関係を見る方法である。写真の回帰式から各区間のAADTTを推定し、既報のAADTTとの差の絶対値を既報値で割った割合を80区間で平均して、平均絶対パーセント誤差(MAPE)を出した。さらに、人口構成・所得・周辺の土地利用・遊歩道の接続状態などを説明変数とする負の二項回帰を通行量、写真、Twitterの各指標に適用し、結び付く条件を比較した。負の二項回帰は、ばらつきの大きい計数データに用いる手法である。
この研究の新しさ
余暇の訪問先とは異なり、移動にも使われる都市の遊歩道を対象に、写真とツイートを同じ区間単位で集計し、赤外線計測に基づく通行量と照合した点に特徴がある。分布図の見た目だけで代替指標と判断せず、回帰で捉えられる変動と、写真から通行量を推定した際の誤差を別々に確かめた。
従来研究との違い
先行研究には、Flickr写真が行楽地の訪問需要の把握に役立つとするものがある。一方、今回の都市遊歩道では、その結果をそのまま移せなかった。また、既報の遊歩道通行需要モデルの説明変数を写真とTwitterにも当てはめた。適合度の指標であるCox–SnellのR²は、通行量モデルが0.64、写真モデルが0.67、Twitterモデルがバッファー幅に応じて0.33と0.39だった。ただし、目的変数が異なるモデルの適合度が近くても、写真から通行量を正確に推定できるとはいえない。
結果と評価
80区間のAADTTは平均953.8、200フィート範囲のAAPUDは平均17.6、AATUDは平均309.81だった。写真と通行量の対数回帰の決定係数R²は0.43で、Twitterでは50フィートで約0.07、200フィートで約0.05にとどまった。論文要旨には「0.43」を相関と表現する箇所があるが、結果本文ではR²として示されているため、ここでは回帰が説明した変動の割合として扱う。Twitterの回帰係数にも統計的な検定結果は示されているが、著者らは通行量との実質的な関連は乏しいと評価している。
写真から推定したAADTTのMAPEは124%だった。区間別の誤差が25%未満だったのは15%、100%を超えたのは20%で、個別区間の通行量を得るには誤差が大きい。湖の周辺で値が高いなど地図上の共通点はあるものの、鉄道に隣接する交通回廊ではツイートと通行量が食い違った。地区・立地変数との関連も一様ではない。例えば人口密度は通行量と、徒歩20分圏の雇用数は写真投稿と、それぞれ有意な関連を示した。いずれも観察された関連であり、地区条件が通行や投稿を変えたという因果効果ではない。
限界・注意点
【著者が述べる限界】200フィートの範囲には遊歩道利用者以外の投稿が入り得る。特に鉄道に近い区間では、ツイート集計への影響が考えられる。写真は50フィートの範囲では少なすぎ、幅を狭めた場合の結果を検討できなかった。写真の内容を調べて遊歩道利用との関係を確認する作業も研究範囲外だった。通勤などの日常利用者は投稿しにくいという説明は著者らの仮説であり、投稿しなかった人を直接調べた結果ではない。結論は2013年の対象80区間と、使用した二つのサービス・集計方法での評価である。
現場への応用案
【編集上の提案】SNSの位置情報を「安価な通行量計」と紹介するのではなく、行楽と日常移動が混在する場所で、投稿がどの利用を拾いやすいかを考える題材にできる。写真の多い区間を計測地点の候補探しに生かす可能性と、写真だけで安全対策に必要な通行量を決める危うさを対比したい。
現場で確かめるには
【編集上の検証案】別の都市で利用を検討するなら、まず計測器による通行量と投稿を同じ期間・同じ区間で集める。集計範囲の幅を変えて道外の投稿の混入を調べ、可能なら写真の内容から遊歩道に関係するものを区別する。そのうえで、湖畔、通勤経路、鉄道隣接区間など立地別に推定誤差を確かめ、用途ごとに許容できる誤差を決めてから補助指標としての利用を判断する。
解説は原文の要旨・本文の確認範囲に基づきます。AIで作成し、同じモデルで原文との照合を行っています。全記事の人手による校閲は完了していません。「現場への応用案」「現場で確かめるには」は編集上の検討案です。
