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公共交通

モントリオールの急行バスは、誰の就業機会を広げたか

Whose express access? Assessing the equity implications of bus express routes in Montreal, Canada

James DeWeese / Manuel Santana Palacios / Anastasia Belikow / Ahmed El-Geneidy
Journal of Transport and Land Use

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急行バスのある交通網と、それを除いた仮想の網を比べると、仕事への到達可能性は高まる一方、改善は所得階層に均等には分布していなかった。

この論文のポイント

  • 2020年の急行バスを含む交通網と、それを除いた仮想網について、45分以内に到達できる仕事数を比較した。
  • 急行バスによる仕事への到達可能性の改善割合は、所得中央値が高い調査区ほど大きいという緩やかな傾向を示した。
  • 2013年の起終点調査に基づく急行バス利用者の平均短縮時間は、全所得階層で1移動当たり5.8分だった。

背景と課題

急行バスは停留所を絞り、場合によっては増便や道路上の優先措置も組み合わせる。しかし、移動が速くなっても、どの地域の人がより多くの就業先に行けるようになるかは、路線の運行速度だけでは分からない。本研究はモントリオールの急行バス網について、その便益の所得別の分布を調べた。

指標に用いる「アクセシビリティ」は目的地への到達しやすさを指す。著者らが主に数えるのは、公共交通で一定時間内に到達できる仕事の数だ。地域全体でこの数が増えても、公共交通をより必要とする人々の居住地で増えるとは限らない、という問題意識がある。

研究の方法

分析の主な単位は国勢調査区で、各調査区の中心を表す重心を出発地・到着地とする。入力は、路線と時刻表を記録したGTFS形式の公共交通データ、調査区別の就業地の仕事数、調査区の所得情報、2013年の起終点調査である。起終点調査には個々の移動や利用したバス系統、世帯所得の情報があり、急行バス利用者を識別できる。まず2020年2月のバス・都市鉄道を含む網と、急行バス路線だけを取り除き、ほかの条件を同じとした仮想網を用意する。経路探索ソフトOpen Trip Plannerで、両網それぞれの調査区重心間の所要時間を求める。徒歩、待ち時間も含め、2020年2月12日の午前8時から8時30分まで10分間隔で計算した値を平均する。これは出発時刻による運行頻度の変動をならすためである。

次に各出発調査区から平均所要時間が45分以内の到着調査区を選び、そこにある仕事数を足す。一定時間内に届く機会を数える「累積機会」指標で、全仕事と、年収3万ドル未満の仕事を別々に集計する。比較する値は、急行バスのある網で届く仕事数から仮想網で届く仕事数を引いた差である。改善割合の地図では、その差を急行バスのある網で届く仕事数で割る。したがって、同じ仕事数の増加でも、到達可能な仕事の総数によって割合は変わる。著者らは両網の地図に加え、差分の地図と調査区の所得中央値との散布図で分布を確かめる。さらに起終点調査で識別した急行バス利用者について、両網で計算した徒歩・待ち・乗車を含む移動時間の差を、世帯所得階層別に集計する。前者は地域から見た就業機会、後者は調査で捉えた利用者の時間短縮を示す。ただし本文には、調査の各移動を仮想網の経路にどう対応付けたかという詳細な手順は示されていない。

この研究の新しさ

急行バス沿線に仕事がどれだけあるかを示すだけでなく、急行バスがなくても通常のバスや鉄道で届く仕事を、仮想網との比較で区別する点が特徴だ。全仕事と低賃金の仕事を分けて数え、調査区の所得中央値に加えて、実際に急行バスを使った人の世帯所得からも便益を点検する。著者らは、地図の比較だけでは見えにくい所得別の差を段階的に記述する、実務向けの分析方法として提示している。

従来研究との違い

急行バスを含む網と除いた仮想網を並べた地図では、前者のほうが仕事への到達可能性の高い区域が多く見える。ただし、2枚を見比べるだけでは改善量や受益者を判断しにくい。差分の地図では、島の西端や北東部などで改善割合が大きい一方、所得中央値が低い調査区の多くでは改善が小さかった。低賃金の仕事だけを数えた場合も、全仕事の場合と空間的な傾向は大きく変わらなかった。

結果と評価

調査区の所得中央値と仕事への到達可能性の改善割合を並べると、全仕事・低賃金の仕事の双方で、所得が高い調査区ほど改善割合も高いという緩やかな傾向が見られた。著者らはこの散布図を統計的な関連の検定ではなく、傾向や例外を探す探索的な手段としている。改善割合が上位5%の調査区では、調査区の所得中央値の平均が80,299ドル、残る95%では56,450ドルだった。

起終点調査に基づく急行バス利用者の1移動当たり平均短縮時間は、全所得階層で5.8分。世帯年収9万~11万9,999ドルでは7.2分、3万~5万9,999ドルでは5.1分だった。低所得の利用者にも時間短縮はあり、便益がないという結果ではない。これらは設定した2つの交通網と調査データに基づく記述結果であり、所得そのものが短縮時間の差を生んだと証明するものではない。

限界・注意点

著者らが明示する研究対象は、モントリオールの急行バスが就業機会への到達可能性にもたらす便益の分布である。所得別の差が路線配置の目的によるものか、計画過程の制度的な偏りによるものかは判別していない。また、時刻表を表す静的なGTFSと実際の運行状況との差も検討していない。計算には朝の限られた時間帯と調査区の重心を用いており、時間帯や区内の位置による違いにも注意が必要だ。

【編集上の留意点】交通網は2020年、起終点調査は2013年の資料であり、就業データにも別時点の国勢調査を用いている。両網の比較は、ほかの条件を固定して急行バスを除いた場合の到達しやすさを表す。実際に路線を廃止した場合の転居、就業先や交通手段の変更まで予測した結果ではない。

現場への応用案

【編集上の提案】新たな急行路線を紹介する際は、路線図に加え、路線の有無で45分以内に届く仕事が地域別にどれだけ変わるかを示したい。全仕事と低賃金の仕事を分け、改善割合と増えた仕事数を併記すれば、割合の大きさだけで便益を判断せずに済む。

現場で確かめるには

【編集上の検証案】導入を検討する地域では、現行網と計画網を同じ出発時刻・就業データで比較し、低所得地域での改善と、徒歩・待ち時間を含む所要時間を確認したい。開業後は実際の運行時間や利用者調査とも照合する。調査区の所得中央値だけで個々の利用者の便益を決めつけないため、可能なら世帯所得別にも集計する。

解説は原文の要旨・本文の確認範囲に基づきます。AIで作成し、同じモデルで原文との照合を行っています。全記事の人手による校閲は完了していません。「現場への応用案」「現場で確かめるには」は編集上の検討案です。

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