高齢者は買い物の行き帰りで交通手段を変えるのか――ロンドンの移動記録を分析
Mode Choice of Older People Before and After Shopping: A Study with London Data
ロンドンの65歳以上の買い物移動では、店との単純な往復で交通手段を変える例は少なく、居住区域のバス停密度は公共交通を含む選択と関連していた。
この論文のポイント
- 単純な「自宅―店―自宅」の移動で、行き帰りの交通手段を変えた割合は3.79%だった。
- モデルでは、居住区域のバス停密度が高いほど公共交通を含む選択がされやすいという関連が見られた。
- 郵便番号区域の指標では、自宅周辺の細かな歩行環境や停留所への実際のアクセスは把握できない。
背景と課題
買い物では、店へ向かうときと購入品を持って移動するときで条件が違う。片道の交通手段だけを調べても、「徒歩で行き、公共交通で帰る」といった組み合わせは捉えられない。この研究は、自宅を出て戻る一連の移動を「ツアー」として扱い、買い物前後の手段の組み合わせと、移動の構成や居住地の公共交通環境との関連を調べた。買い物先は、購入の有無を問わず訪れた小売店を指す。
研究の方法
資料は2001年のロンドン地域交通調査による、一人一日の移動記録である。著者らは65歳以上について、最初の移動が自宅発、最後の移動が自宅着で、途中に買い物を含む記録を抽出し、欠損を除いた。分析に用いたのは4,186人による4,513件の買い物関連記録である。結果として扱う選択肢は、買い物前と買い物後の交通手段の組み合わせ。説明変数には、前後の移動時間と費用、立ち寄りや買い物以外の目的の有無、年齢、移動上の障害、世帯の自動車保有などを用いた。居住地の3桁郵便番号区域には、道路1km当たりのバス停数と鉄道駅数、同じ停留所にバスが来る平均的な間隔を対応させた。間隔が短いほど運行頻度は高い。
次に、調査記録にない「選ばなかった手段を使った場合」の時間と費用を補った。時間は、実際に自動車運転、公共交通、自動車同乗、徒歩を選んだ移動ごとに、距離から所要時間を求める線形回帰を推定する。各手段について、一定の時間に距離当たりの増加分を足す形であり、距離が延びると推定時間も延びる。運転費用は走行1km当たり7.4ペンスに駐車料金を加え、未選択時などの駐車料金は内ロンドンで3ポンド、外ロンドンで1ポンドと設定した。公共交通は無料乗車パス保有者を0ポンド、それ以外を1ポンドとし、同乗と徒歩は無料と仮定した。
そのうえで、まず「自宅―店―自宅」の単純な往復のうち、手段を変えなかった記録に多項ロジットモデルを当てはめた。これは手段ごとに、時間・費用や属性に応じた選ばれやすさを推定し、各手段の選択確率を計算する方法である。続いて複数の立ち寄りを含む記録にも対象を広げ、徒歩を行きまたは帰りに含む組み合わせをそれぞれまとめたネスト型ロジットモデルを推定した。似た選択肢に共通する、観測されない要因による関連を認めるためである。係数の符号から属性との関連を読み、条件を固定した選択確率も試算した。ただし論文は両モデルの完全な効用式と推定の詳細を省略しており、本文だけでは計算を完全には再現できない。
この研究の新しさ
分析の焦点は「買い物には何で行くか」だけでなく、その後に使う手段との組み合わせにある。単純な往復と立ち寄りを含む移動を区別し、手段変更を移動全体の構成とともに検討した。また、バス停の密度と運行間隔を別の指標として扱い、停留所の配置とサービス頻度の双方に目を向けた。ただし、これらは居住区域単位の指標であり、各人が実際に利用できる停留所を直接測ったものではない。
従来研究との違い
記述集計では、対象全体の買い物前後の組み合わせは徒歩・徒歩が29.39%、公共交通・公共交通が18.78%だった。一方、「自宅―店―自宅」に限ると、行き帰りで手段を変えたのは3.79%。徒歩で行き公共交通で帰る組み合わせは2.60%、逆方向は1.19%だった。立ち寄りを含む記録で見られる組み合わせを、単純な買い物往復でも頻繁に起きる変更とみなすことはできない。多項ロジットとネスト型ロジットでは分析対象と選択肢数が異なるため、報告された適合度の数値だけで優劣は判断できない。
結果と評価
単純な往復のモデルでは、運転費用、世帯の自動車保有、バス停密度、バスの運行間隔などに統計的に有意な係数が報告された。立ち寄りを含むモデルでも、公共交通を含む選択肢に対してバス停密度の係数は正、運行間隔の係数は負だった。鉄道駅密度の係数は有意ではない。ネスト型モデルの二つのまとまりを表すパラメータは、選択肢を独立に扱う場合の値と統計的に異なり、徒歩を含む選択肢間の関連を考慮する根拠となった。
著者らの例示計算では、特定の基準条件でバス停密度を道路1km当たり0.6カ所から1.2カ所に変えると、公共交通の選択確率は0.04から0.08になった。他の条件を固定したモデル上の試算であり、停留所の倍増による実際の利用増を測定した結果ではない。また、買い物前の移動時間には正の係数が示されたが、「行き道を楽しむ」「帰りは荷物が負担になる」という説明は著者らの解釈であり、楽しさや荷物の効果を直接測ったものではない。
限界・注意点
著者らが指摘する限界は、公共交通の指標を数千世帯を含みうる郵便番号区域で対応させており、自宅近くの停留所までの距離や段差など、局所的な違いを捉えられないことだ。近隣の買い物先、実際および主観上のサービス品質、購入品の荷物も十分には扱えていない。加えて、未選択手段の時間・費用には推定や仮定を用いる。編集上も、一日の移動を記録したロンドンの観察データから得た関連を、停留所増設の因果効果や他地域での効果として一般化しないよう注意が必要である。
現場への応用案
編集上の応用案として、高齢者の買い物交通を紹介する際は、往復で手段を変えることを前提にせず、一店だけを訪れて帰る場合と、複数の店などに立ち寄る場合を分けて示したい。単純な往復での変更の少なさと、複雑な移動で組み合わせが増える傾向を混同せずに伝えられる。
現場で確かめるには
編集上の導入時の検証案として、停留所の配置を見直す地域では、整備前後に高齢者の自宅から停留所までの実際の歩行経路、乗降のしやすさ、買い物の行き帰りに使う手段を調べたい。運行間隔、運賃、近隣の買い物先の変化も記録し、利用の変化を停留所数だけに帰さない設計が必要である。これは論文が実施した介入評価ではない。
解説は原文の要旨・本文の確認範囲に基づきます。AIで作成し、同じモデルで原文との照合を行っています。全記事の人手による校閲は完了していません。「現場への応用案」「現場で確かめるには」は編集上の検討案です。
